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文化祭当日は、これ以上無いほどの晴天だった。
朝イチの開会式を終えて、実行委員の腕章をつけた俺はひとまず教室へ戻る。
「…おおっ」
いつも制服かジャージでだらけまくっているクラスメイト達の、見事なコスプレ姿。
前日の衣装合わせとは違って、髪型やらメイクやらで随分雰囲気が出ていて、それは眩いほどに完成度が高い。
そうだ、俺はこれのために実行委員をやっていたんじゃないか。
「高瀬、どう?似合ってる?」
せっかく感動していたのに、ウェイター姿に着替えたヒビヤンが俺の視界を塞ぐ。
邪魔だ。ウインクしてくんな。
「男とかどうでもいいわ。そのセリフ女子に聞かれたかった」
「つかお前は着ないの?俺見たい」
「なんでお前が見たいんだよ」
「え、一緒に写真撮って真島に送りつけてやろうかと」
発想が貞男に対する俺かよ。
類は友を呼ぶというが、まさにこのことだ。
ヒビヤンの誘いには乗らずに教室を出ると、最終チェックのため各施設の点検に回る。
これが終わったら一般公開が始まるから、そうなったらあとは自由時間だ。
教室にいると先輩が来そうだし、見つからないように適当にサボりながら模擬店を見て回るかなと決める。
だが一般公開が始まってぞろぞろと人が入ってくるのをボケっと見ていたら、ものの数秒で先輩に捕まった。
「うめのん、どう?似合ってる?」
メイド姿に着替えた先輩が、くるりと一周回ってみせる。
ひらりとスカートがはためいて、あと少しでパンツ見えそうだった。惜しい。
「そのセリフ女子でも先輩以外に言われたかった…」
「なんか言った?」
「いえ、似合ってますよ」
「ほんと?嬉しい」
文化祭のテンションもあるんだろう。
先輩はどことなくはしゃいだ感じで、含みのない笑顔だった。
「それじゃのんびり見に行こうよ。ね、ご主人様」
「ノリノリじゃないですか。でも俺行かないって言いましたよね」
「大丈夫。真島くんの教室は行かないようにするよ?」
「行ってもあいつ演劇だし…ってそういや先輩、アイツに余計な事言っただろ」
目の前のメイドさんは可愛らしく小首を傾げる。
すっとぼける気か。
「…前と同じことするの止めて下さい。次やったらもう口聞きませんよ」
「えー。やだやだ。うめのん変なとこ真面目だからなあ」
先輩のそういう行動は、何も初めてじゃない。
先輩と別れた後、新しく出来た何人かの彼女にも先輩はそういう嫌がらせ行為をした。
それが原因で別れたこともある。
別に俺とヨリを戻したいわけじゃないくせに、この人は寂しいと面倒な気の引き方をする。
「でも許してくれるからなあ。そういうところ大好き」
「許してませんよ。呆れてるんです」
とはいえ俺がここまでズケズケ言える女は、たぶんこの世に母親と先輩だけだろう。
いまいち突き放せないのは、この人も俺も今まで本気で人を好きになったことがないからだ。
それをお互い知っているからこそ、踏み込まれた結果破局しようと俺も『まあいいか』とそれで終わらせてきた。
そんなことで終わるくらいなら、どのみちすぐ終わるだろうし。
先輩が楽しそうに俺の腕を引いて、あざとくご主人様と機嫌を取ってくる。
ひらひらと揺れるメイド服は確かに可愛くて、俺は『まあいいか』ともう面倒になって少し先輩に付き合ってやることにした。
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