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「わ、高瀬くん。いらっしゃいませ」
「おー、夏祭り以来だな」
猫カフェと看板があったから気になって入ってみたら、亜美ちゃんが可愛らしい猫耳姿で出迎えてくれた。
なるほど、猫がいるわけじゃなく従業員が猫の格好しているのか。
男なんか猫の着ぐるみで暑苦しそうだ。
「可愛いな。すごい似合ってる」
「…えっ、あ、ありがと…」
亜美ちゃんはそう言って照れたように微笑んだが、どこかその表情は気まずそうだ。
そういや俺が亜美ちゃんを好きだと誤解されたままなんだっけ。
もう面倒だからそのままでいいが。
「え、誰?元カノ?」
「違いますよ。何でもかんでも元カノ扱いしないで下さい」
「だって気になるもん。違うならいいんだけど」
俺と先輩のやり取りに亜美ちゃんが目を瞬かせる。
「…え、ひょっとして彼女出来たの?」
「ああ、いやこの人は…」
「文化祭一緒に回ってるんだからもう彼女でいいじゃん」
「全然違いますよ。なんですかその価値観」
適当な俺が言うのもなんだが適当な事ばっか言うな。
亜美ちゃんは俺達のやり取りにどこか驚いたように目を瞬く。
「…なんかみんなあっという間に切り替えられてすごいなあ。仁美ももう彼氏作っちゃったし」
「えっ、マジかよ」
断ろうとしたくせに、自分を好きだと言ってくれた子に彼氏が出来ると若干ショックなんだが。
「なに微妙にへこんでんの」
じとっと目を細める先輩と猫カフェで少し時間を潰してから、また別のところへ行くことにする。
時たますれ違う他の実行委員に経過報告等をしつつ、一応サボっていませんよと見せかけながら俺と先輩は歩いていた。
俺も先輩も腕章をつけてるし、監視役だからこそ自由にしているが、本来ならクラスの出し物に参加しないと行けない立場なわけだ。
ちなみに貞男は演劇に出たいと駄々をこねたので、後夜祭のBGM担当のみというかなり楽なポジションを勝ち取っている。
先輩のクラスのメイド喫茶でひとしきりデレデレしてから三年の教室を出ると、先輩は少し拗ねていた。
自分で呼んだくせになんなんだ。
だが一つ上の学年ってのは、それだけで年上の女の色気がある気がして男ならそそられる。
「ねーねー、うめのんのクラス行こうよ。コスプレ喫茶だっけ」
「いや、それだけは断ります」
「じゃあ演劇見に行く?」
「それはもっと嫌です」
「じゃあうめのんのクラスで決まりね」
なんでだよ、と思ったが先輩に引っ張られる。
この瞬間、ヒビヤンに面白がられるのが決定した。
だが俺のクラス近くまで行ったら、ガヤガヤと人混みがすごかった。
どうなってんだ。大繁盛じゃねーか。
「なんだこれ、どうしたんだよ」
「あー、高瀬か。さっき真島が来てさ。『た、高瀬くんのクラスの出し物だから、俺っ…見てみたくって』って言って帰ってったぞ」
「ちょっと待て。今の真島のモノマネじゃねーよな」
ヒビヤンがノリノリで真島の口調を真似たが、似てなさすぎて苛立ちすら覚えるレベルだ。
「カリカリすんな。で、なに。高瀬は浮気中?」
「そうでーす」
先輩がノリノリでヒビヤンに返答する。
また適当な事言いやがって。
「おい、浮気とか人聞き悪い事言ってんじゃねーよ」
「でもお前真島に後ろめたさ感じてんだろ」
「えっ…」
ヒビヤンの言葉に思わず押し黙る。
言われてみれば俺は、今真島には会いたくないと思っている。
先輩と俺が一緒にいるところをみたら、アイツがへこむのを分かっているからだ。
だが俺は先輩があまりにも強引だから仕方なく付き合ってるだけだし、そこに下心があるわけでもない。
え、それは浮気じゃないと思うんだがどうなんだ。
なんて思考を巡らせていたら、ヒビヤンは先輩にニコっと笑いかけた。
「元カノさん、コイツ今珍しく面白い所だからあんまりからかわないでやってくださいよ」
お前は何を言っているんだ。
だが先輩はふと真顔になる。
なんだこの空気。
勝手に進んでいる展開に置き去りにされていたら、グイと先輩に腕を引かれた。
「混んでるからやっぱ別のとこ行こ」
「はあ?」
勝手すぎる先輩は俺をグイグイと引っ張りながら、賑わう人混みの中に再び戻っていった。
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