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放送室を出て、廊下の窓からグラウンドを見降ろす。
トクトク、と変に心臓の音が早い。
グラウンドには真島の姿は見当たらず、貞男が言う通りアイツは俺を探しているんだろうか。
ウロウロとざわつく女子もどうやら真島を探しているようで、後夜祭がある一種のかくれんぼみたいになってんじゃねーか。
とはいえ今更あんな人混みのキャンプファイヤーに参加する気もないし、真島は俺を探しているらしいが正直何を言われるかもまだ分からん。
もういっそ誰にも会わずにさっさと文化祭を終えたい。
そう思い教室に鞄を取りに行くことにする。
みんな後夜祭に出ているのか、校内は一気にガランと静まり返っていた。
グラウンドに響く後夜祭の音色を遠くに聞きながら、教室まで戻る。
扉を開ければ片付けは終わっていて、まだ少し装飾は残っているが、あっという間にいつもの教室だった。
ちゃんと元の位置に戻っている自分の机まで行くと、脇に掛けていた鞄を持ち上げる。
橙色の机に視線を落としてから、ふと思い出した。
そういえば真島に告白されたあの時も、ちょうど今みたいに誰もいない教室で一人だった。
実はあの時、彼女にフラれた直後だったんだよな。
放課後話があるから残っててと言われたから何かと思えば、他に好きな奴が出来たとあっさりフラれた。
付き合って確か2週間くらいだったし、あーそうですかと別れて微妙な気持ちで黄昏れてたら、真島が来たんだっけ。
いきなりボロボロ泣いてる真島に、何事かと開いた口が塞がらなかったのを覚えている。
男と付き合うなんて俺にとっちゃ考えられないことだが、それでも真島だったから面白そうだし付き合った。
そして実際アイツは面白かった。
真島の行動の一つ一つが馬鹿みたいで、俺なんかに必死過ぎて笑えた。
結局のところ三ヶ月も付き合ったとか俺の中では最長記録で、そう考えりゃあいつに情がわくのも当然だったのかもしれない。
夕焼けに染まる教室に、色濃い影が伸びる。
もう帰るか、と鞄を持ち上げて教室の入り口に視線をあげた。
――そこに、真島がいた。
肩で息を切らしながら扉に手をついて、必死に息を整えている。
俯いていてその表情は見えないが、貞男の言うとおり着替える間も無く俺を探していたんだろう。
全速力で長距離走でもやってたのかというほど、その姿は苦しそうだ。
ロミオの衣装は相変わらず似合っていたが、そんなゼーハー息切れしてる王子を俺は見たことがない。
何を、どんな顔で言われるんだろうと俺は身体を強張らせる。
真島の言葉が怖かった。
「…よ、良かったぁ。見つかった」
だがようやく顔をあげた真島は、真っ赤な顔でこれ以上ないほど嬉しそうに笑った。
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