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すぐに頬に触れてきた真島の手の感触に目を閉じる。
頬を通り過ぎてこめかみから耳にその手が移動したのと同時、耐えられないといった様子でかき抱くように引き寄せられた。
相変わらずめちゃくちゃその力は強くて、息が詰まる。
だが俺は何も言わなかった。
真島に抱きしめられていることに、頭の中が痺れるような甘さを覚えてしまった。
熱い手の平が、堪らないとばかりに俺の髪に差し込まれる。
後夜祭のBGMはまだ遠く響いているが、誰が来るかも分からない教室だ。
相手は男だとちゃんと分かっていて、頭のどこかでこの関係は絶対まずいと思っているのに、今は突き放すことが出来なかった。
真島は急くように俺の額や耳に何度もキスをして、どうしようもなく気恥ずかしい気持ちに固く目を瞑る。
真島が俺に触れるような、こんな情熱的な触れ方を誰かにしたことは一度もなかった。
「…真島」
掠れる声で名前を呼んだら、目の前の身体がピクリと震える。
それからぎゅっとまた抱きしめられる。
「も、もう少し」
別に離せと言うつもりはなかったんだが、恐らく真島はそう言われると思ったんだろう。
まだ離したくない、と言うように俺を抱きしめる手が強くなる。
それもそうか。
今まで散々触るなと真島を突き放してきたのは俺だ。
俺はそっと真島の頬に手を伸ばした。
えっ、という感じでその瞳が俺を見る。
俺から触られることを想定していなかったんだろう。
何が起きているんだ、とでもいいたげな表情で固まっている。
ふっと目を細めて笑うと、頬に触れた指先を俺は真島の唇へ這わせた。
柔らかいその感触に、ふにと指先を押し付ける。
惚けたように俺を見つめる間抜け面が、可愛いと思ってしまった。
「――ごめん、もう無理」
真島はそう言って触れていた俺の手を取ると、吸い寄せられるように俺の唇にキスをした。
押し付けられるようなキスは一度離れて、もう一度。それから、もう一度と繰り返される。
真島の指先が確かめるように今度は俺の唇をなぞり、それからもう一度。
触れるだけのキスだが、それだけで酷く身体が熱かった。
再び抱きしめられて、俺は真島の胸にもたれてぼーっとしていた。
ああ、ついに男とキスしちまった。なんて思いながらも、おかしい程心臓の音は速かった。
「…っ」
不意にヒクリと、喉を震わせる音が聞こえた。
それからぼたぼたと雫が落ちてきて、は?と思って顔をあげる。
見上げた先で、真島がみっともない顔で泣いていた。
え、なんで。今泣く所じゃねーだろ。
「おい、何お前いきなり泣いてんだよ」
「…っごめん。う、嬉しくて…っ」
「はあ?」
真島は真っ赤な顔で大粒の涙を流す。
涙の雫が次々と衣装に落ちて、その色を染めていく。
「た、高瀬くんとキス出来る日がくるなんて…っ。ゆ、夢かもって…」
おいおい、と思ったが真島の涙は止まらない。
全くコイツは、結局泣くのかよ。
せっかくいい格好をしているというのにしまらない奴だな。
だがそれでこそ真島で、俺はそんなコイツだからこそ、ここまで心惹かれたんだろう。
ボロボロ泣いてる真島の手を握ってやると、その手を引く。
「ほら、一緒にキャンプファイヤー見に行こうぜ。俺と少しは文化祭の思い出作りたいんだろ?」
そう言ってやったら、真島はまた気持ちが込み上げたように身体を震わせる。
それから「大好き」と言ってもう一度泣いた。
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