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真島を突き放してしまった。
教室に戻って、脱力するように机に突っ伏す。
アイツは今頃どんな顔をしているんだろう。
俺の前以外では格好良い奴だからビービー泣き崩れたりとかはしていないと思うが、それでもショックを受けているのは明白だ。
ずっと俺の一言一言にビビっていた奴だ。
いつ別れられるのか、次の俺の言葉が別れ話だったら、と事あるごとに怯えていた。
その真島の苦痛な表情に耐えきれなくなったのは俺の方だ。
結局の所俺は、やっぱり男と付き合うことに踏み切れなかった。
ただそれだけのことだ。
突き刺すようにせり上がってくる痛みに目を瞑る。
引き返せる内に引き返したほうが良い。
今ならまだ大丈夫なはずだ。
この関係を少しでも正当化出来る言い訳を探していたが、結局それは現実から目を逸らそうとしていただけだった。
七海と話して、それが分かった。
珍しくヒビヤンが全く絡んでこない授業を終えて、気付いたらもう放課後になっていた。
一人にしてくれとは言ったが、もしかしたら部活前に真島が会いに来るかもしれない。
俺は鞄を持って立ち上がると、いち早く教室を出た。
「おい、高瀬。昼だぞ」
「あ?おー…」
「おー…ってお前」
机に顔をくっつけたままヒビヤンを見上げる。
何もしたくないし腹も減ってない。
食堂行くのも面倒くさいし、もうずっと寝ていたい。
というかいつの間に次の日の昼休みになってたんだ。
竜宮城もビックリの時間の経ちっぷりだ。
「なんか見事にダメ人間に仕立てられてんじゃねーか」
「じゃーヒビヤン面倒見てくれよ」
「絶対お断りだ」
そう言いながらもヒビヤンはガシッと俺の首に手を回すと、引きずるように無理矢理俺を教室から連れ出す。
「とりあえず学食な。飯は食え」
ズルズルと引っ張られる。
引っ張られながらふと思い出した。
「あれ、お前彼女は?別に飯くらい一人で食えるからいいよ」
「うるせえ」
なんでいきなりキレられたんだ。彼女と喧嘩でもしてんのか。
とりあえず自分で歩けるとヒビヤンを引き剥がすと、二人で学食に向かう。
食堂に足を踏み入れようとしたところで、ガバッと後ろから抱きつかれた。
「せーんぱい、昨日置いてっちゃうなんて酷いじゃないですか」
七海だ。
全力で体重をかけられて、かなり重い。
だがなんかもう、それを引き剥がすのも面倒くさい。
そう思ってそのままにしていたら、俺を抱きしめるその手が妙に意図をもったような手付きに変わる。
「おいこら」
ガッとヒビヤンに引っ張られて、七海が俺から引き剥がされていった。
「あ、いたんですか。邪魔者先輩」
「いたんですよ。どっちが邪魔者だ」
コイツらなんで仲悪いんだ。
適当に食券買ってヒビヤンと一緒に窓際の席に腰を下ろしたら、七海も着いてきた。
なんか隣に腰を下ろしてきたが、もうセクハラされようがどうでもいい。
七海は俺の顔を覗き込むように顔を傾ける。
「先輩やっぱ怒ってます?」
「えっ、なにが」
「昨日真島先輩に会ってから、先輩突然いなくなっちゃったじゃないですか。先輩、真島先輩のファンだしなんか嫌だったのかなって」
てっきり真島との関係がバレたかと思っていたが、七海は全く気付いてなかった。
いや、そもそも真島が俺を好きになるはずがないと思っているんだろう。
それが普通だ。
「別にいいよ。もう俺真島ファンやめるから」
「――えっ」
声を上げたのはヒビヤンだった。
俺の言葉に何か察したらしいが、ふいと視線を背ける。
背けた先で、キラキラと希望に満ち溢れる瞳とぶつかった。
「じゃあ今日から七海ファンになってくださいっ」
それだけは絶対にありえない。
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