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あれから俺は真島から逃げるように生活をしていた。
ちょうど中間テストの時期になって特進科とは時間が合わなくなったのもあり、真島と顔を合わせずに済んでいた。
それでも毎日のようにメッセや電話は何件も来たが、また連絡するとだけ返しておいた。
少し時間が欲しかった。
真島に流されず、一人で考える時間が欲しいと思った。
だが一人でいくら考えても、俺が真島と笑って付き合える未来は見えてこなかった。
学食に行くとだいたい七海がいて、誘ってもいないのに、というかむしろ断ってんのに勝手に人の隣で飯を食う。
あれ以来ヒビヤンは毎日俺に付き合っていて、七海が俺にちょっかい出そうとするとなぜかいつも間に入ってくれた。
あまりにも俺が無気力で無抵抗すぎて、保護者感覚にでもなったんだろうか。
それとも単純に七海の邪魔をするのが楽しいのかも知れない。
なんにせよ俺の面倒を見るのはお断りだとか言ってたくせに、持つべきものは後ろの席の奴だ。
ヒビヤンとは相変わらずどうでもいいくだらない会話しかしていないが、あれだけ茶化していたくせに真島の話を口に出すことは一度もなかった。
そうしているうちに中間テストが終わって、俺は人生で初めての赤点を取った。
真島に課題やら宿題やらをやらせてきたツケがついに回ってきたか。
「うわあ…再試とか…」
俺は別に頭は良くないが、赤点を取るほどのアホではなかったはずだ。
というか再試やるのが面倒だから、そこだけは回避してきた。
「根本的にお前今授業聞いてねーし寝てばっかじゃん。数学教師もお前の授業態度に呆れてたぞ」
「それは今に始まったことじゃないけどな」
ヒビヤンに指摘されながら、とんでもない点数の数学の答案用紙をぐしゃりと握りしめる。
確かに最近の俺はほぼバイト漬け以外は、寝ることしかしてない。
何かもう思考を放棄した廃人の如く何もしてない気がする。
放課後になって再試会場となっている、特別棟へ向かった。
ひんやりとしたこの独特の感じは、文化祭実行委員で来た時以来だ。
やる気はないがそれでも合格しなければまた追加テストになるからと問題をよく見てみれば、なんでこんな簡単な問題で赤点になったんだと謎になるほど、あっさり合格できた。
再試を終えて特別棟の教室を出ると、目の前に鮮やかな夕日が広がっていた。
最近陽が落ちるのも早くなってきて、窓の外はあっという間に一面のオレンジ色だ。
こんなオレンジ色を見たら、嫌でも思い出してしまう。
誰もいない教室。俺を見上げる真っ直ぐな視線。
ベッタベタな台詞や、酷く情けない泣き顔。
慌てて頭を振ると、俺は教室へ足を向ける。
そろそろアイツに答えをだしてやらないといけなかった。
少し時間はあいたし、きっと俺の気持ちも、アイツの気持ちも多少は落ち着いたはずだ。
だけどもう少し。
もう少しだけ。
答えを出したら、今度こそ全部終わってしまう。
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