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ずぶずぶに泣く真島は俺の手を掴んで離さなかったが、その手を引いて歩いたのは俺だった。
高校卒業までコイツと一緒にいると決めたら、俺のここ最近の気持ちはすごく楽になった。
もちろんそれは先のことを見て見ぬ振りをしているだけだが、それでも今すぐ離れるのとは全然違った。
真島は俺を送るだけと言ったが、俺が真島と離れたくなくてしょうがなかった。
その手を引っ張って家に招き入れると、誘うようにその頬に手を伸ばす。
だけど真島は俺の手を掴むと、堪えるように顔を俯かせる。
「…だ、駄目だよ。俺は高瀬くんが嫌なことを一つだってしたくない」
コイツは俺が無理に、真島の機嫌を取っているんだと思っている。
今までだったら欲に任せていたものを、期限を設けられたことで今度は慎重になっている。
でも俺は真島にそんな風に思ってほしくて、この提案をしたわけじゃない。
「…お前バカだな。俺は好きにしていいって言ってんだよ。俺のこと、卒業までお前の好きにしてくれていいから」
真島の目が見開く。
すぐに伸びてきた手が、力強く俺を引き寄せる。
耐えられなかったと言うように唇を重ねられた。
欲望のまま酷く求められるように、容赦なく口の中を貪られる。
泣きたいほど気持ちよくて、胸が酷く痛かった。
「ご、ごめん。止まらない…っ、ごめん」
ぼたぼたと涙を落としながら、真島はそれでも俺を求めることをやめなかった。
少なくとも今は別れないと言われたことで、タガが外れてしまったんだろう。
でもそれでよかった。
コイツを甘やかしてやりたいと思った。
グズグズに甘やかして、ずっと怯えてきた言葉を考えさせないようにしてやりたかった。
「――好き。大好き…」
真島の気持ちが全力で伝わってくる。
正直ドロドロに溶かされているのは俺も同じで、真島の服に縋り付きながら黙ってされるがままにされていた。
真島が好きだ。
求めるように伸ばした手にも口付けられ、愛おしむように真島の唇が俺の手に滑りおちる。
俺の起こした行動は一つだって無駄にしないというように、至極大事そうにその唇が俺の肌をなぞる。
求めたらすぐにでも答えてくれるその仕草に、頭の芯が痺れてくらりとする。
両思いってこういうことなんだなと、俺は初めて知った。
胸がいっぱいで、そばにいるのが嬉しくて、だけど酷く切ない。
「…高瀬くん、俺を好きになって。絶対に大事にするよ――」
愛おしむように髪の毛を撫でられて、胸がぎゅっと掴まれる。
もう充分大事にされている。
そんなのは痛いほど分かっていて、触れられる度身体中を駆け抜けるような甘い疼きが響いてやまない。
真島が俺に好きだと言う度、俺もお前が好きだよ、と心の中で何度も思う。
だけどそれを言葉に出すことはなかった。
俺は真島に好きだとは、絶対に言わない。
ぶっちゃけこのままガチで襲われるかなと思うような食いつかれようだったが、真島はそこまで手を出してはこなかった。
だけど本気で腰砕けになるほどどろどろにキスされまくって、許してやってるのに結局真島の顔は涙でグズグズになっていた。
「…少しは気が済んだかよ?」
「す、済まない」
「済まねーのかよ」
ふふっ、と笑ってしまう。
笑ったら、また抱きしめられた。
バクバクしている心臓はどちらのものなのか、もう分からない。
「…あ、明日からまたお弁当作るからね。す、少しでも一緒にいたい」
「いいよ。全部お前の言うとおりにしてやる」
「……っ」
俺の言葉に、真島がまた泣き始める。
人を抱きしめながらもメソメソするその背中を優しく撫でてやって、俺は明日のことより今飯を作ってくれと真島にまた笑った。
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