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三年になっても特に二年と変わらぬ時間が過ぎていくものだと思っていた。
だが三年になって俺達が二人でいる時間は徐々に少なくなっていった。
俺のスケジュールは二年の時と全く変わらずバイトくらいのもんだが、三年になった真島のスケジュールはかなりハードだった。
テスト前以外でも当たり前のように授業時間は長くなり、そのあとはすぐに部活。
昼休みだって授業時間が変わってたまに一緒に食えない時もある。
そんなスケジュールにもかかわらず真島は俺の飯を作りに来るというから、さすがの俺もそれはやめろと言う。
「…嫌だよ。高瀬くんに会えないほうが俺は苦しい…っ」
そう言ってボロボロと泣く真島は、本当に後一年で俺に対しての気持ちを整理出来るのかと言うほどいつだってグズグズだ。
「あー、もう泣くな。俺はただ、お前に無理してほしくないんだよ」
「…っ。好き、大好き…っ」
犬みたいに身体を押し付けて俺に甘える真島はデカイ図体のくせに可愛くて、俺はいつも心絆されてしまう。
俺もちゃんとお前が好きだよ、と心の中で返してその背中を撫でる。
気持ちの整理を付けないといけないのは、真島だけではなく俺も同じだ。
それでもまだ時間がある、と今はまだ目を瞑っていた。
新入生が入り新鮮な空気で溢れていた四月も終わり、五月になる。
昼休みに屋上でいつも通り飯を食っていたら、妙に真島が緊張した顔をしていた。
相変わらず分かりやすい。
「なんだよ。言いたいことあんならさっさと言え」
「あ…あのね、で…っ」
「で?」
かーっと真島の顔が赤くなる。
何か言いづらそうに肩を強張らせて固まっている。
なんなんだと見ていたら、その顔が青くなってきた。
「おい、ちゃんと息をしろ」
「あっ、そうだよね、ごめん」
ゼーハーと一人で勝手に死にかけている。
コイツの重症っぷりはどれほど一緒に居ても留まることを知らない。
「…あ、あのね。連休なんだけど…い、一日だけっ…俺に時間をくれないかな」
「なに。別にいつでも俺んち来ていいよ。春休みだってそうしてただろ」
「えっと…その、そうじゃなくてっ…」
なんなんだ、と首を傾げたら、真島はいよいよ決意したようにぎゅっと目を瞑った。
「――で、デートしようっ!」
あんまり緊張して言うモンだから、少し面食らう。
何言われんのかと思ったが、なんだそんなことかよ。
だが改めて言われると、少し気恥ずかしいものはある。
考えてみれば俺と真島はあえて二人でどこかへ出掛けたりということはなかった。
前はみんなで遊園地行ったりだとかはあったが、大体休みの日は真島が講習やら部活で時間がないから、俺の家とスーパーくらいしか行ってない。
真島は告白後の返事待ちみたいな表情で、顔を俯かせて堅く目を瞑っている。
あれだけ触ることを許してやってんのに、今更デートに誘うくらいでそんな緊張することかよ。
何より俺の時間は全部真島にやると言ったはずだが。
「いいよ。どこ行きてーの?」
クスリと笑って真島を見つめる。
きっとコイツと行く場所ならどこへ行っても新鮮で、どこへ行っても楽しいだろう。
俺の言葉に真島はガバっと顔を上げると、散歩に連れてって貰える犬の如くキラキラと目を輝かせる。
「す、水族館に行こう!」
「えっ」
さすがにそこは三回目なんだが。
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