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ホテルに戻ってヒビヤンに礼を言ったが、別になんでもないという顔であしらわれた。
こういう変に後腐れないところはありがたい。
真島との約束通り、俺達はお互いやるべき事を終えてから待ち合わせをすることにする。
それにしてもまさか、アイツが連絡してこなかった理由が一日目に何気なく送った『スマホ禁止』だったとは。
バカ正直な奴だから真島への発言は気をつけないとと思っていたが、まさかあそこまで従順な奴だったとは分かっていたのに驚かされた。
とりあえず一階のロビーで待ち合わせようとメッセを送って、俺は今日も女子部屋行くぞと誘ってくる同室の奴らに断りをいれる。
ぞろぞろと向かう姿を見送りながら、一番最後に出ていこうとしたヒビヤンの浴衣を引っ張った。
「お前も行くの?」
「行くだろ。暇だし」
そりゃそうか。
俺はまだはっきりと話し合って真島と仲直りしたわけじゃないが、一応なんとかなったことを伝えておくかなと思案する。
「あー…あのさ」
だが改めて言おうと思うと少し言いづらい。
それでもヒビヤンには昨日の夜世話になったし、軽く報告だけでもするべきかなとは思う。
「おーい、日比谷。先行ってるぞー」
「おう」
別にさらっと流して言おうと思ったのに、他の奴らのせいでわざわざ二人になってしまった。
改めて場を作られると、それはそれで言いづらすぎる。
いやだって、冷静に考えれば何の報告だよ。
「…お前ってさ。何でも器用な奴だと思ってたけど、実際そんなことねーのな」
「え?」
先に落ちてきたヒビヤンの言葉に、パチリと目を瞬かせる。
じっと俺を見下ろす視線は、何を考えてるのか全く分からない。
まあ真島でもなければフツーそうだ。
「真島に言っといて。次はねーよって」
「…はあ?何いってんだお前」
意味深なヒビヤンの台詞に不信感丸出しな顔で見上げたら、いつも通りククッと含んだような笑いで返された。
「ま、俺のことも今度また慰めヨロシク」
「なんだよ、もしかしてまだへこんでんのか?それなら――」
少し話を聞いてやるかな、とも思ったがグイと回り込んだ手に背中を押された。
「ほら行け。待ってんだろ」
「え?おー…」
そのまま廊下へ押し出されると、じゃーなとヒビヤンはあっさり言って俺とは別方向へ歩いていった。
結局報告してないが、まああの様子だと勝手に察してくれたらしい。
それにしてもこの修学旅行では、本当にヒビヤンに世話になった気がする。
まさか真島とのことを全部打ち明けて、それどころか涙も見せてしまうとか。
今更ながらヒビヤンが自分の中で『ただの後ろの席の奴』から『親しい友人』へと格上げされていたことに気付いて、俺は一人で妙にむず痒い気持ちになっていた。
真島と約束したロビーへ来たが、まだ誰もいなかった。
アイツがきたらきっと忙しなく走り抜けてくるだろうし、とりあえず適当に時間を潰しているかと立て掛けてあった待合用の雑誌をパラパラとめくる。
しばらくそうしていたが、不意に何か寒気のようなものを背後に感じた。
そういえば一日目にヒビヤンと探検中に謎の御札を見つけたし、まさか…と振り返ってみれば、物言わぬ顔で突っ立って俺を見つめている真島がいた。
こえーよ。なにやってんだアイツは。
「真島」
スリッパをパタパタと響かせて走り寄ると、真島は俺を見つめたまま、まだ惚けている。
「突っ立ってないでなんか言えよ。声掛けなきゃ気づかねーだろうが」
ぼーっとこっち見てるとかマジで幽霊かと思ったわ。
ブンブンと片手を真島の前で振ってやったら、ようやく気付いたらしく瞬きを繰り返している。
「あ…ご、ごめん。その、浴衣すごい似合ってるから…見惚れちゃって」
「え?ああ…そらドーモ」
ヒビヤンには昨日微妙に似合ってないと言われたのに、真島の目は今日も絶好調に腐っているらしい。
というか俺なんかより真島のほうがよっぽど似合っていて、コイツは気付いてないだろうが後ろからカシャカシャと盗撮されてる音すらする。
こんなんじゃゆっくり話せねーだろが。
理不尽な怒りを真島にぶつけるようにジトッと見上げたが、ひたすらに食い入るような熱い視線が返ってくるだけだった。
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