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部屋を出て、俺と真島は熱くなった身体を冷ますようにバルコニーへと出向いていた。
そろそろ同室の奴らが戻ってくるかなと思ったのもある。
結局俺は真島の言葉に何も返せなかった。
限界まで絆されて、もう言ってしまおうと思った。
だがギリギリで思いとどまったのは、好きな奴の一番の幸せを優先したからだ。
男同士でずっと一緒にいて、それが一番の幸せの形だなんて俺にはやっぱり思えない。
「修学旅行もあと一日だけだね」
小さく息を吐き出しながら、真島が夜空を見上げる。
その横顔はまだほんのりと熱を帯びていて、俺が返事を返さなかったとはいえ、真島は機嫌を損ねたりはしていなかった。
苦しめてごめんな、とそれでも心の中で思ってしまう。
本当は俺が余計な制限を設けないで、二年のあの時ちゃんと真島を振っていれば良かったんだろう。
あの時はまだ、引き返せるかもという気持ちが少しはあったはずだ。
真島のことに関しては、何から何まで俺は自分のしたことを後悔ばかりしている気がする。
「高瀬くんと、少しでも思い出作れて良かったなあ」
真島はニヘラと俺に緩みきった笑顔を向ける。
人がこんな感傷的な気持ちになっていると言うのに、コイツの顔を見てるとどうにも気が抜けるというか。
俺は一つ息を吐き出すと、何度見ても美の神に愛されたように整ったその顔に力なく微笑む。
「ああ…そういやお前、なんで俺の場所が分かったんだ?誰かに俺の班が回るところとか聞いてたのかよ?」
「――えっ?えっと…ち、違う」
ならコイツやはり俺にGPSでも付けてやがるのか。
いよいよ犯罪にまで手を染め始めたか。
どう考えたってあんなにたくさんある選択肢の中で、俺の行き先を特定することなんか不可能なはずだ。
「……その、メッセが…」
「え?」
真島は言いづらい、というより言いたくないという顔をしていた。
妙に後ろめたそうな、でも俺の質問には返さないといけないと思っているのか変な顔で葛藤している。
そんな顔されたら逆に気になるわ。
「ほら言えよ。言わねーともう触らせねーぞ」
「――えっ!?い、言うっ!その、実は…っ」
そもそも今日触りたいと言ったのは俺の方なのに、俺の言葉をすっかり真に受けた真島が慌てたようにスマホを取り出す。
それから少し操作して、画面を俺に見せてきた。
「――え、これって…」
「きょ、今日ずっと送られてきて…それで俺、もう見てられなくって――」
真島のメッセ画面をスクロールすればするほど出てくるのは、今日一日の俺の写真。
これみよがしに2ショットで自撮りしてるその相手は、もちろんヒビヤンだった。
「…アイツ。やたら今日カシャカシャ写真撮ってると思ったら」
しかもご丁寧にちゃんと背景で場所が分かるようになっている。
考えてみればヒビヤンと真島は勉強会も一緒にしたし、去年の夏休みも遊んだりしてるし、一応友達なんだよな。
それは一見ただの真島への嫌がらせのようでもあるが、ヒビヤンに全てを話してしまってる俺としては、写真を送ることで真島を焚き付けてくれたようにしか見えない。
「…で、お前はこれを辿って俺に辿り着いたと」
それもすげーな。
スマホ使って居場所聞けば一発なのに、禁止令しっかり守ってるところが更にすごいというか、もはやただのバカだ。
「あー。だからヒビヤンがお前に伝言しろって言ってたのか」
「――え?」
「『次はねーよ』だってさ」
なるほど、この手助けのことだったのか。
アイツ俺にはなんにも言わないで涼しい顔してたくせに、影でこんな事してるとか。
ちょっとというか、かなり格好いいじゃねーか。
これは明日、昼飯奢ってやろう。
なんて友人の意外過ぎる一面に感動していたら、ふと真島が静かになっていることに気付いた。
なんだろうとその顔を見たら、ド○えもんもビックリの青い顔をした真島が凍りついたように固まっていた。
「え、なに」
「な、なんでもないっ」
「なんだよ」
「た、高瀬くんには絶対分からないっ」
「――はぁ?」
またしても真島に謎の喧嘩を売られた。
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