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「今から俺がいいって言うまで触るの禁止な」
「――ええっ」
そう言って俺はずいっと鼻先10センチの距離でその瞳を覗き込む。
あっという間に何か耐えきれないと言った表情で、真島の顔が赤く染まる。
やっぱりコイツの顔綺麗だな、と俺は近い位置でぼんやり観察する。
睫毛とかすげー長い。
これ以上ないってほどトマトみたいに真っ赤な顔してるくせに、それでもやっぱりイケメンはイケメンのままらしい。
「し、心臓が…っ」
「なに、ドキドキしてんの?」
意地悪に顔を傾けて微笑んでやったら、ぼーっと蕩けたような瞳が返ってきた。
そんな物欲しそうな目で見られると、さすがに俺も胸中穏やかじゃいられないんだが。
決して顔には出さないが。
「…さ、触りたいです」
まだ何もしてないのに堪え性ねーな。
形の良い唇が苦しそうにそう紡いで、心臓がバクリと高鳴る。
お仕置きしようとしてるのはこっちなのに、真島にのまれてどうする。
「ダメ。じっとしてろ」
俺はそっと手を伸ばすと、綺麗な色の真島の髪の毛に触れる。
細い髪の毛の感触は、手ですくい取ると絹糸のようにさらさらと指先からこぼれ落ちる。
ふわりと優しい風と共に、爽やかな香りが俺の鼻孔を掠めた。
なんだか堪らなくなって、その髪の毛にゆっくりと口付けを落とす。
「…たっ…たか――」
ビクリと面白いほど真島の肩が跳ね上がった。
息遣いまでどこか荒くなってきている。
今にも俺を抱き締めそうな両手が視界に入って、制するように口を開いた。
「待て」
両手が止まる。
それを見て取ると、今度は髪の隙間から覗く真っ赤に染まった耳に手を伸ばす。
くすぐるように指先で撫でると、真島は唇を噛み締めて堅く目を閉じた。
そこにも一つ口付けを落とし、それから頬、首筋、と俺はいつも真島が俺にするように順に真島に触れては口付けを落とす。
真島はもう見てられないとばかりに目を閉じて必死に耐えていたが、こんな機会はないし俺はゆっくりと真島に触れたかった。
ちゃんと、確かめるように。
真島のことを、忘れないように。
残り、8ヶ月。
ここから先は間違いなくお互い進路で忙しくなり、特に特進科の真島は受験勉強で俺にどんどん構えなくなっていくだろう。
大事な受験シーズンに、さすがに俺も飯を作りに来いなどと言うつもりはない。
「く、苦しいよ…高瀬くん」
「そりゃお仕置きだからな」
真島の全身から、溢れ出すほどの俺に触れたいという意思表示を感じる。
側にいるだけで感じる過度なまでの愛情表現に、俺はもうずぶずぶにのみ込まれていた。
首筋を撫でていた手を上へ滑らせていくと、真島の唇に触れる。
やわらかく、いつも俺を好きだとうるさいほど言葉を紡ぐ唇。
それでもすぐに俺を食おうと必死になるその唇に、何度心臓を持ってかれそうになったことだろう。
「ご、ごめんなさい。もう無理…っ」
「うん。もうちょっと我慢できるよな?」
クスリと優しく笑ってやると、真島がうう、と唸る。
もう少し。
真島と一緒にいたことを、ちゃんと忘れないように。
クイと顎をすくい取ると、必死に堪えている様子のその瞳に『好きだよ』と心の中で語りかける。
それから俺は真島の唇に、最初で最後の自分からのキスを落とした。
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