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その後『よし』とは言っていないのに真島に飛びつかれて、予鈴が鳴るまで好き勝手に懐かれた。
発言に気をつけろと言ったのに全く自重しない真島は、散々俺に愛の言葉を押し付けて名残惜し気に教室へと戻っていった。
真島の勢いに飲まれてボケっとしてた俺が弁当箱を返し忘れた事に気付いたのは、そんな後ろ姿を見送った後で。
仕方なく放課後、HRが終わってから真島の教室へと向かった。
どうせ向こうから来るとは思っていたがアイツはまだ授業もあるし、それにたまには俺から行ったら喜んでくれるだろう。
が、教室に行ったら真島はいなかった。
代わりになんかソワソワしている貞男がいた。
何してんだアイツ。
「う、梅乃!いいところに来た!」
貞男がこんな事を言うなんて珍しい。
事情を聞いてみれば、真島が一年の女子だかに引っ張られていってしまったらしい。
「絶対告白だろ!ど、どうする!突入するか?」
「しねーよ。授業もあるしそのうち帰ってくんだろ」
「バカ、今日は自主学習だから一応時間空いてるんだよっ。ああもう、なんでお前焦らねーんだ。すげー可愛い子だったぞ」
「それは真島より可愛い子のほうに興味があるな」
そう言ったら「最低野郎」とゲシっとまた蹴られた。
最近よく貞男の蹴りを食らっている気がする。
とはいえ今更あの真島がそう簡単に、可愛い女の子の告白で落ちるとは思えない。
それに高校終わると同時に別れを告げようとしている俺が、今更そんな事で焦るなんてのもありえないし、貞男のようにテンパるなんてのはもはや論外だ。
仮にもし真島がそっちの子に興味を持ったなら、それが一番いいに越したことはない。
だがすぐに帰ってくると思った真島は、なかなか帰ってこなかった。
「なあ、なんで奏志帰ってこないの。なんで」
「知るか。俺バイトあるし帰るわ」
「待てっ」
青い顔した貞男に腕に縋りつかれる。
なんでお前が青い顔してんだ。
そもそもお前の一番の恋敵は俺じゃないのか。
「や、やっぱり見に行こう」
「どこにだよ」
「告白っていったら校舎裏に決まってんだろ」
なんか勝手な思い込みがあるらしい貞男に腕を引っ張られる。
正直覗きとかしたくないんだが、腕を引かれている以上は仕方なく足を向ける。
校舎裏が見下ろせる管理棟の窓から下を覗いてみたら、貞男の読み通り真島と女子の姿が見えた。
なんか二人で話をしている。
よく見たら盛り上がってんじゃねーか。
「えっ、ど、どうしよう。奏志取られちゃう。梅乃っ、お前ならなんとか出来るだろっ」
「お前は俺を何だと思ってんだ」
だがそこから見える女子は、確かに貞男が言うように中々に可愛い子だった。
真島と並んでいる姿はすごく自然で、正直お似合いだとすら思う。
これが当たり前の光景なんだよな、なんて思いながら二人の姿を見下ろす。
――と、不意に真島が俺の姿に気付いた。
見上げる瞳と視線があって、ドキリと心臓が跳ねる。
なんでここにいるのがバレたんだ。
真島の俺センサーは驚異的なまでに進化している。
真島は一度表情を大きく輝かせたが、だが軽くサッと手をあげると微笑むに留まる。
誰だあのイケメンは。がっつきまくってた昼間とは偉い違いじゃねーか。
おそらく周りを見ろと言った俺の説教が、ちゃんと効いているんだろう。
いつもだったら気にせず大喜びで、ブンブン手を振ってそうだ。
真島の隣の女子もその仕草で俺に気付いたのか、こっちに向かってペコリと頭を下げる。
なんだかそれは、彼氏の友人に気付いた彼女的な態度に見えた。
「あれ告白じゃないだろ」
「――えっ」
隣にいる貞男にそう言ってやる。
そもそも真島がそんな女子の相手を、一々するはずもない。
「じゃ、俺帰るわ」
「えっ、奏志たぶんこっち来るぞ。なんか走ってったけど」
「お前に任せる。じゃーな」
そう言って俺は弁当箱をひょいと貞男に渡すと、教室棟へ戻るため足を進める。
心の中に抱いてはいけない感情が燻ったような気がして、今は真島の顔が見たくなかった。
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