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六限の体育はまさかの長距離走とかいう、俺のこの世で最も嫌いな授業だった。
やる気がない上にスタミナもないから、だらっだらと歩く勢いで走る。
しかも女子は校庭のトラック数週なのに対して、男子は学校の外周を何周もするとかマジで体罰としか思えない。
「さっさとやる気出して終わらせたほうがマシなんじゃねーの」
「無理。というか話しかけんな。余計疲れる」
「はいはい」
そう言ってヒビヤンは颯爽と走り去ってしまった。
もうこれどっかに隠れて周回誤魔化したろうかなと、俺は隠れられそうな場所を視線で探しに入る。
だがうまいこと一人になるタイミングが見つからず、結局ぐだぐだと走り続けている間にぽつり、と顔に何かが当たった。
「え」
見上げると、暗雲立ち込める空からぽつりぽつりとどんどん雫が落ちてくる。
噓だろ、と思ってる間にそれはざーっと一気に降り出してしまった。
まだ校舎まで距離のあるこんな場所で、傘もないのに雨に打たれるとか最悪すぎる。
もともと嫌々やっている所にそんな事態に見舞われるとか、もう一気に心が折れて立ち止まると、俺は雨宿りしようと近くの民家の軒下へ入った。
そこはちょうど外周側からは死角になっているところで、ちょうどいいしサボることにした。
慌てたようにペースをあげるクラスメイト達の姿を座って眺めながら、頑張れよと内心で応援する。
しばらく待っていたが雨脚は弱まるどころか強くなる一方で、このままだと授業の方が先に終わってしまう。
どうせこんな雨じゃどんだけ走ったってずぶ濡れ確定だし、もう諦めてだらだらと歩いて戻ることにした。
だが途中で予鈴が鳴って、さすがにまずいかと少し足を速める。
もう歩けば靴はぐしゃぐしゃ言うし、どこもかしこもずぶ濡れで最悪だった。
おまけに校庭に戻ったら誰もいないし、どうやら途中で中止になったらしい。
サボった俺が悪いが、生徒が一人いないことに教師も気付け。
ああもうこれどうすっかなと歩いていたら、目の前に傘を持って校舎から走り抜けてくる奴がいた。
「――高瀬くんっ」
真島だ。
あっという間に俺の前に来ると、手首を掴まれて傘の中にいれられる。
「あの、窓から体育がっ…雨でっ…だから――」
なるほど。
つまり要訳すると、窓から体育の授業で長距離走をしてる俺を見ていたが、途中で雨が降ってきて授業が終わったにも関わらず戻ってこないから、心配になって飛んできた、ということらしい。
「大丈夫だよ。そんな心配しなくても」
「う、うん。何かあったのかと思って…」
真島はホッとしたように胸を撫で下ろす。
しかしコイツほんと俺のストーカーだな。
クラスメイトも教師も誰も俺がいないことに気付かないのに、全く関係のない真島だけが気付くとか。
「あの、風邪引いちゃうから早く戻ろ?」
「おー」
昇降口に戻ったら、真島がタオルを用意してくれたらしくバサリと被せられた。
そのままくしゃくしゃと髪を拭いてくれる。
ふわりと洗濯物のいい香りがした。
「これ部活で使うやつじゃねーの。いいのかよ」
「大丈夫だよ。ちゃんと洗ってあるからね」
そうじゃねーよ。
とは思ったが、まあいいかと口を閉じる。
今は六限も終わってどこのクラスもHR中なんだろう。
校内はシンと静まり返っていて、ざーっという雨音だけが響いていた。
真島の手のひらを頭に感じながら、ぼたぼたと滴り落ちる雨の雫を見つめる。
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