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「……っ」
不意に、真島が息を詰める。
何かと思って見上げたら、どこか赤らんだ顔と視線があった。
ひたすらになんかガン見されている。
なんだか見覚えのある表情に、少し頭を巡らせる。
そう、それは確か修学旅行三日目の夜に――。
「おい、人をエロい目で見てんじゃねーよ」
「わっ、ご、ごめんっ」
ハッとしたようにその目が逸らされる。
雨でびっしょりになってしまっているせいで、着ているシャツが身体に張り付いてしまっていた。
どこか透けるようなそれに欲情されたらしい。
何も女子のブラが透けてるとかでもないし、コイツの脳内は一体どうなっているんだろう。
真島は慌てたようにバサリとジャージを取り出すと、それを俺に掛けてくれた。
それからまた柔らかく髪を拭かれる。
肩に掛けられたジャージは俺のより全然大きくて、抱き締められた時のように真島の香りでいっぱいになる。
なんだかくらりとしてくるようなそれに、自然と頭がぼーっとしてしまう。
確実に心臓が早まっていくのを感じて、堪らず目の前のシャツをそっと掴んだ。
ほんの僅かなそれにも真島は気付いたようで、髪を拭く手を動かしながら優しく心地良い声音を落とす。
「どうしたの?」
なんでこんな気持ちになってるんだろう。
ドキドキする気持ちと一緒に、七海の話が蘇ってきてしまった。
真島がどうしても欲しい、と執着したらしい一年の女子マネージャー。
おそらくただの知り合いなんだろうが、もしそうじゃなかったら。
コイツは単純な奴だから、俺みたいに何かのきっかけであっという間に誰かを好きになるなんてこともありえるだろう。
もしそうなったら俺はどうなるんだ。
卒業も待たずに、あっさり捨てられるのか。
俺にしたみたいに、他の奴に好きだ、大好きだと言い始めるのか。
ゾクリ、と足が竦むような感情が這い上がっていく。
それは今までに一度も体験したことのない気持ちで。
――不意に、ちゅっと掠めるように真島に唇を奪われた。
驚きに目を瞬かせると、コツンと一度額を合わせられてから、それはすぐに離される。
「…どさくさに紛れてなにしてんだよ」
「えっと…ごめんなさい。どうしてもしたくなっちゃって」
冷え切っていた顔がじわりと熱くなっていく。
どうしてもしたかったなら、まあ仕方ない。
再び何事もなかったかのように髪を拭かれながら、俺は今しがた自分があまりにらしくもない想像をしていたことに気付いた。
馬鹿か俺は。
こんなに俺の事を好きな奴が、そう簡単に俺を手放すはずがない。
というか気になるなら、もうさっさと聞けばいい。
真島相手に何を遠慮する必要がある。
「あー…お前さ、一年に前からの特別な知り合いでもいんの?」
七海も言っていたし、どうせ知り合いだろう。
コイツは俺に噓をついたりはしないし、もし噓をついてもすぐに分かる。
だが真島は俺の突然の発言にキョトンと首を傾げる。
「いないよ。俺中学はこの辺じゃなかったから、見たことある人はいないなあ」
「…へえ、そっか」
ざーっと叩きつけるように雨が降り続ける。
俺は必死に他の言い訳を頭で探していた。
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