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真島の引退試合が終われば、もうすぐそこに終業式が待っている。
相変わらず真島と昼休みの時間は合わなかったが、部活も引退したことだしあのマネージャーと関わることももうないだろう。
なら今日こそは放課後顔見せに来るかな、と思ったらようやく久しぶりに真島が顔を出した。
「弁当うまかった。ごちそーさん」
ほいと昼に貰った弁当箱を真島へ返す。
ここ最近はずっと貞男づてに返していた気がする。
「高瀬くん、あの…今日はバイト?」
「いや、今日はないけど」
そう答えたら、みるみるうちにその顔が大喜びに変わる。
一体なんなんだ。先に要件を言え。
「あ、俺まだ授業あるんだけどね、今日自習からだからもう少し時間あってね。えっと…」
「ああ、ならお前が大丈夫な時間まで付き合うよ」
そう言ったら飛び跳ねそうな勢いで真島が俺の手をギュッと両手で握ってきた。
どうしようもなく喜びを隠しきれないのか、人前にもかかわらずその表情はだらしなく緩みまくっている。
とはいえ俺も最近真島とゆっくり一緒にいることがなかったから、顔には出さないが気持ちが浮き上がる。
屋上に行こうかと思ったが、真島がそのまま自主学習に移れるように、雨の日御用達の実習室に行こうと言った。
真島が勉強しているのを見ているのでもいいし、少しでも時間を無駄にしたくない。
なら特別棟へ向かおうと、俺達は廊下を歩く。
「真島先輩っ」
そこに、あの一年の女子マネージャーが来た。
なんでだ。もう部活は引退したはずだろ。
あっという間に真島の腕を取ると、男を虜にするような可愛らしい表情で見上げる。
「今日も教えて下さいっ。お願いしますっ」
何の話かは分からないが、察するに部活の事を何か教えてあげていたんだろう。
これでこの女子マネが実はバスケに詳しいとかいう理由で真島が推していた、という線は消えたな。
なんて思いながらじとっとその絡んだ腕を見る。
「ごめんね。部長との約束は引退までだから。あとは部の人に分からないことは聞いてね」
真島はそう言ったが、どうやら納得言っていないらしくぷう、と頬を膨らませる。
可愛いなおい。
元々可愛い子がするぶりっ子とか可愛くないはずがない。
俺だったらあんな風に女子に強請られたら即落ちてる。
そういやぶりっ子すげー好きだったな。
「でも真島先輩が私のこと推してくれたじゃないですか…っ。真島先輩がいいです。終業式まででいいんで…」
少し泣きそうな顔になる。
ぶりっ子好きだがぶりっ子と付き合いまくって痛い目見てきた俺としては、ああこれは嘘泣きだな、なんて察する。
だとしても当時の俺はつい可愛くて騙されにいってしまうわけだが。
それよりこの口振りからして、本当に真島がこの子を推薦したんだなと分かってしまった。
七海の適当な情報だったという線も消えて、いよいよ俺の中で他に言い訳がなくなる。
真島は断っているが、それは俺の手前そうしているだけなんじゃないだろうか、なんて不安が過る。
「部長も終業式までならいいんじゃないかって言ってくれたんですよ。真島先輩が気に入った子なら聞いてくれるんじゃないかって」
「え、部長が?」
「はいっ。だからお願いします。もうワガママ言わないですから…」
媚びるように見上げた視線に、気持ちが酷く揺さぶられる。
真島は『気に入っている』という言葉を否定しなかった。
その事実に愕然と立ち尽くしてしまう。
縋り付かれている腕をほどかない真島も、間違いなく恋しているような顔で見上げる女子マネージャーも、一気に何もかも見たくなくなった。
心の中が真っ黒に塗りつぶされていくような感覚を知って、もう全て投げ捨ててしまいたくなる。
「――え」
真島が驚いたように振り向く。
俺は何も言わず、俯いたまま手を伸ばしていた。
心臓が酷くバクバクいっている。
真島の制服のシャツをほんの少しだけ掴む手は、誰のものでもない、間違いなく俺のもので。
行って欲しくない、誰にもとられたくない、なんてこんな酷い嫉妬心が自分から出るなんて思いもしなかった。
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