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「本当に無理だから」
真島は謝るでもなくあっさりそう言うと、俺の手を掴んで焦ったように引っ張る。
ああ、俺をとってくれたのか、と内心で思いながら、もう心の中はぐちゃぐちゃだった。
俺以外の気に入っている奴なんて、なんで作ったんだ。
真島の気持ちが離れていくって、こういうことなのか。
すごく虚しくて、不安で、取り残されたような気持ちになる。
飽きるくらいならあんなにたくさんの好きなんか一言だっていらなかった。
こんなずぶずぶに抜け出せなくなるような幸せ、一つだって知りたくなかった。
実習室に着くと鍵を開けて、真島は俺をその中へ引き込む。
ぴしゃりと扉を締めたら力強く抱き締められた。
「ごめん、待たせてごめんね」
抱き締められても、優しい言葉を言われても、俺の身体は冷えたままだった。
「…なんだよ、お前気に入ってんの。さっきの子のこと」
抱き締められながら見上げる。
真島の言葉が怖いと思った。
それでも聞かずにはいられない。
「…あ、あの子は気に入ってるとかじゃなくて、その…」
真島はどこかかあっと顔を赤くして視線を逸らす。
それは紛れもなく、何か隠している顔だった。
一気に足先から這い上がった恐怖に、身体が震える。
俺はとっさに真島の胸を押して、突き放した。
「…無理だ。もう俺、無理」
「…え」
「そんな風になったお前となんか、一緒にいれない」
真島の目が大きく見開く。
愕然としたように顔が青ざめていく。
「ちょ、ちょっとまって高瀬くん、なんで?俺何かしたかなっ…嫌だよ、待って」
「無理だ。耐えられない」
突き放した手が、震える。
他の奴を好きになった真島の顔なんか、もう一秒だって見たくない。
卒業まで絶対別れないと言ったのは俺だが、それでも耐えられなかった。
俺と同じような事を他の奴にする真島を近くで見ているなんて、絶対に耐えられるわけがない。
そんなのは別れるより、想いを伝えられず我慢するより、心が壊れてしまう。
「なんで、理由を言って――」
震える唇から、勝手に言葉が滑り落ちる。
「…悪い、信じられなくなった」
「――え」
「…お前の言葉が、信じられない」
だから、ごめん――と続けた言葉と同時だった。
突然強い力で手首を掴まれ、勢いよく背後の壁にドンッと押し付けられる。
鈍い痛みが腕や背中に伝わって、思わず顔を歪める。
「離さないから」
ギリ、と骨が軋むような強い力だった。
落ちてきた真島の声音はいつもの優しく暖かみのある声音ではなく、全く温度の感じられない声音だった。
だが真島は気にしていないようで、もう片方の手で俺の頬に触れる。
酷く冷たい手だった。
そのまま強引に上向かされて、強制的に視線を合わせられる。
「卒業までは何があっても俺と一緒にいてくれるって、高瀬くんが言ったんだよ?ちゃんと守ってもらうから」
その目はどこか据わっていて、ゾクリと背筋が凍りついた。
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