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とりあえず殴ることはせず「なんかすまん、誤解してた」と二秒で謝った。
真島は呆然と涙を流してから、一気に脱力したのかそのまま俺にもたれ掛かるように抱きついてきた。
思いっきり体重掛けられたが、もう完全に俺が悪い気がしてその背に手を回して受け止めてやる。
でもやっぱ重い。
「高瀬くん、高瀬くん…っ」
おまけに真島の甘えん坊スイッチが入ってしまって、重すぎてずるりと落ちる腰に合わせて伸し掛かってきた。
そのまま座り込んで、ぎゅーと抱き締められながら頬にキスされる。
思いっきりグズグズになってる真島の鼻水が顔についた気がしたが、もう今回ばかりは仕方ないかととりあえず好きにさせておく。
というか俺の方も同じく気が抜けていた。
誤解だったのかと知って、氷が溶け出すように安心感が流れ込んでくる。
「ゆ、ユキがね。高瀬くんを名前で呼ぶのがずっと羨ましくて…あ、あの子の名前呼ぶと、幸せな気持ちになれるかもって…それで、えっと…」
「…そんなに俺の名前呼びたかったのかよ」
「だって、大好きなんだ。大好きな人の名前を持っている人を見たら、その…」
真島はまたゴニョゴニョと語尾を小さくしていく。
まあ理由は分かった。だからどうしても、と推薦したわけか。
考えてみれば相手が気の毒になるほどくだらない内容だが、俺としてはそんな理由で良かったと心底安心していた。
むしろこの理由以外の理由なら、どう考えても今の結果には結びつかなかっただろう。
俺は間違いなく真島をぶん殴って、そのまま約束を違えていたかもしれない。
そうならなくてよかった。
真島が俺をちゃんと好きでいてくれて良かった。
そんな風に思う自分を理不尽だと分かってはいるが、今は思わずにはいられない。
「呼んでいいよ。名前で」
「――えっ」
真島が固まる。
別に俺の名前くらい、いくらでも呼んでくれていい。
そんな事でコイツの機嫌が取れるなら、安すぎるくらいだ。
真島は硬直したまま口をパクパクとさせていた。
金魚かお前は。
「ほら、言ってみ?」
俺にもたれ掛かって抱きついたままの真島の背中を、子供をあやすように撫でてやる。
「う…」
だが真島は一言目を口にしたっきり、また固まってしまう。
あれ、と思ってその顔を覗き込んだら、もう湯気がでそうなほど真っ赤だった。
それでもさっきまでどうしようもなく溢れ続けていた涙は、ようやく止まってくれたらしい。
良かった、と思いながら真島の目尻に残った涙を親指で拭ってやる。
こいつも紛らわしかったが、俺も誤解をしてしまった。
正直あんなに女々しく追求して嫉妬してしまうとか、恥ずかしすぎて10回くらい軽く死ねる。
真島が途中本気で怒ったのにはかなりビックリしたが、それでも終わってみれば結局いつものグダグダな真島に戻っていた。
「う…」
そしてまだ葛藤しているらしい。
どんだけ一言名前言うのに手間取ってるんだ。
もうさっさと言えや、と促すようにニコッとわざとらしく笑ってやったら、真島は何か込み上げたようにぶるっと身震いした。
「笑った…っ。可愛い。高瀬くん、大好き――」
堪えきれないといった様子で、キスをされた。
言わねーのかよ。
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