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一般公開が始まると、例年同様校内は大賑わいだった。
特に俺のクラスは女子に大盛況で、いろんな学校の女子が甘いスイーツ目当てに訪れていた。
ヒビヤンの目論見は間違いなく大成功だ。さすがすぎる。だが残念ながら、一つ誤算がある。
企画した本人がいねーじゃねーか。
今頃実行委員を頑張っているであろうヒビヤンに心の中で合掌しつつ、忙しい店番の時間を持ち前のバイト力でこなす。
腹が減ってきた頃、廊下の奥から黄色い声が聞こえてきた。
真島だ。
姿は見てないがそんな声を響かせるのは、いつだってアイツしかいない。
そう察して教室の扉へ視線を向けると、こっそり中を覗き込む姿を発見した。
俺に気付かれないように覗こうとしているらしいが、実に目立ちまくっている。
周りの視線全部集めといてよく隠れられると思ったな。
「おい。何してんだ」
「――わっ、あ、あのっ」
見つかった、とアワアワしながら赤くなっている。
動揺する視線が俺の体と顔に移動して、それから俺のクラスへと忙しなく動く。
「じ…時間がっ…似合ってて…出し物がっ、高瀬くんの…じゃなくてTシャツでっ」
どうやら話し掛けられる心の準備が出来ていなかったらしい。
おそらく時間になったから迎えに来たよ。そのTシャツ似合ってるね、ところで高瀬くんのクラスの出し物なら俺も食べてみたい、とかそんなところだろう。
「いいよ。入れよ」
「――うん!ありがとうっ」
嬉しそうに返事をした真島を教室内へ迎え入れたら、大歓迎とばかりに女子が真島を取り囲む。
俺ももう店番終わりだったから、真島と一緒に回るわとクラスの奴らに言ったら当たり前のように代わってくれた。
最近夫婦ネタがいよいよリアルになってきているような気がしないでもない。
そういえばこの間どっかの女子に、同じ手に入らないなら女に取られるより男である俺に取られたほうがいいとか言われた。
意味はよく分からんが、それでも不快に思われているとかではないらしいので気にしないことにする。
「…た、高瀬くんのクラス、女の子のお客さんいっぱいきてるね」
「おー。ヒビヤンが女子層狙ったからな」
席に通された真島にパンケーキを持って行ってやって、俺はのんびりジュースでも飲むことにする。
「高瀬くんは食べないの?」
「俺甘いモンそんな好きじゃねーし。他行って食うから、お前ゆっくり食べな」
「――うんっ」
嬉しそうに真島がケーキを頬張る様子を、頬杖ついて眺める。
いつもは俺が食ってる姿を真島がガン見している気がするから、なかなか新鮮だ。
真島はアップルパイが好きだと言っていたが、どうやら基本甘いものが好きらしい。
顔を綻ばして食べる姿に、自然とこっちの表情も緩む。
「可愛いな」
「――えっ」
あ、口に出てた。
真島が目をまん丸にさせて、俺を見る。
それからキョロキョロと周りを見て、ガックリと肩を落ち込ませる。
コイツ今何か勘違いしたな。
「ばーか、お前のことだよ」
「えっ、えっ。お、俺?」
「そう。なんか幸せそうに食ってるからさ」
真島はぺたりと自分の顔に手を当てる。
自分がどんな顔しているか分かってないらしい。
とりあえず郵便ポストもびっくりの真っ赤な顔をしている。
「た、高瀬くんの方が千倍可愛いよ」
「…別に可愛いの言い合いしたいんじゃねーよ」
というかこんなに女子盛りだくさんの教室で真島だけを可愛いと思ってしまった俺の目は、どうやらついに腐ってしまったらしい。
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