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「美味しかったなぁ。あのね、去年も高瀬くんのクラス行ったんだよ」
「あー…そういや」
ヒビヤンが来たとか言ってたな。
俺は確か去年はミカ先輩にあっちこっち連れ回されてたんだったか。
名残惜しげな女子の視線を感じつつ自分の教室を出て、真島と歩きながら模擬店を見て回ることにする。
が、案の定真島が歩けば女子の視線が遠慮なく集中して、ともすれば声を掛けられまくる。
しかもコイツ忘れてたが文化祭実行委員の腕章してるから、そう邪険にするわけにもいかない。
「…あの、場所をお聞きしてもいいですか?」
パンフ片手に次から次へと道案内をお願いされて、「全然分からないですぅ」とかぶりっ子してる女子に懇切丁寧に説明している真島を待ち呆ける。
コイツが大人気なのは分かってるし、覚悟してたから今さら気にしないが。
どんだけ待たされたって今日はのんびり付き合ってやることにしている。
「うーめのん」
不意に名前を呼ばれて、顔を向ける。
久しぶりのその姿を視界に捉えて、俺は目を見開いた。
「ミカ先輩」
「わー!久しぶりだよー!会いたかったよー!」
卒業式以来だ。
ミカ先輩はもう高校生ではなく、ちゃんと女子大生といった感じだった。
相変わらずふわふわとした雰囲気は健在だが、濃かった化粧は控えめに、くるくるだった髪の毛はさらっとロングのストレートヘアへと、ギャル系から清楚系へと変貌を遂げている。
どうやら文化祭を遊びに来てくれたらしい。
「なんか先輩見た目変わりましたね。大人っぽくなった」
「えへへ、似合ってる?」
「似合ってますよ」
素直に感想を言ったら、きゃーとわざとらしく喜ばれた。
「この方がねー、男ウケいいの。高校の時もこっちが良かったかなぁ」
どうやら性格は相変わらずらしい。
「というかうめのん、そのほっぺたどうしちゃったの。喧嘩?」
不意に頬に手を伸ばされる。
遠慮なく触れられて、ピリッと痛みが走った。
「痛いですよ。俺にも色々あるんで」
「ふーん。面倒くさがりのうめのんが色々ねえ」
「わっ――だ、ダメっ!触っちゃダメですっ」
いきなり走り込んできた真島が、ガッとミカ先輩の手首を掴む。
触っちゃダメって俺は危険物か何かか。
咄嗟の行動だったらしく、真島は掴んでからそれがミカ先輩だと気付いて、面白いほどビクリと肩を跳ねさせた。
「やだー、真島くん積極的だなぁ」
「ヒッ、お…お久しぶりです…」
相変わらず苦手意識があるらしい。
青い顔して慌てて俺の後ろへサッと回り込む。
いやだから俺より図体デカイし隠れられねーから。
「ふふ、今年はうめのんと一緒に回れてるんだね。去年は私に取られちゃったもんねー?」
覗き込むように真島に言うから、体をずらして真島の視界を塞いでやる。
「ミカ先輩、真島をいじめるの止めてくださいよ」
「ごめんごめん、つい可愛くて。素直すぎるのも考えものだよねえ」
そう言って先輩は悪びれもせずクスクス笑う。
「だいじょーぶ。おじゃま虫はすぐ消えちゃうから。私も彼氏ちゃんと来てるんだよー」
「ああ、そうなんすか」
「うん。偶然うめのん見つけたからね、話し掛けたくなっちゃった」
そう言ったところで、ミカ先輩を呼ぶ男の声がした。
見れば生真面目そうな大学生で、随分イメージが違う奴とまた付き合っているなと頭の片隅で思う。
「じゃーねっ。文化祭楽しんでくるー」
あっという間にひらひらと手を振って踵を返した先輩を見送るが、不意に俺の後ろから出てきた真島がサッと前に立ちはだかった。
どうしたいきなり。
「…あ、あのっ。待ってください」
「え?」
ミカ先輩が振り向く。
「俺、忘れてないです。三上先輩の言葉」
一体何をいきなり真島は言い出してるんだ。
俺と同じ顔でキョトンとしたミカ先輩だったが、何か思い至ったように「ああ」と声を出した。
「それは良かったぁ。真島くんだけは忘れちゃダメだよ」
「覚えてますけど…でももしかしたら、言葉通りになってしまって」
「ありゃ」
俺の知らない会話をしているミカ先輩と真島に、若干の疎外感を感じる。
いじめっ子といじめられっ子には何か分かり合えるものがあるらしい。
「真島くんは良い子ちゃんだからなあ。じゃあこういうことから始めよっか」
そう言ってミカ先輩は真島に近寄ると、真島の腕章を取り払う。
なにしてんだ先輩。
そのまま満足したように「バイバイ」と手を振って彼氏のところへ行ってしまった。
ぼけっとミカ先輩を見送っている真島の隣に立ち並ぶ。
「いやお前何されてんの」
「た、高瀬くんっ。俺――」
真島がぐっと唇を噛みしめる。
それから何か決意したように口を開いた。
「お、俺っ、不良になるっ」
全く意味分からん。
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