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とはいえ腕章を外してくれたおかげで、鬱陶しいほど道案内をせがんでくる女子はいなくなった。
不良になったらしい真島と改めて模擬店めぐりを再開して、俺達はたこ焼きにポテトフライ、ポップコーンにアイスと様々に食べ歩きをする。
ちなみに真島のクラスはよく分からん資料の展示会とほぼ不参加の出し物らしく、まあ三年の特進科とか忙しいから仕方ない。
「高瀬くん、おいしい?」
「おー。うまいよ。一口食う?」
ほいとフランクフルトを口元へ持っていってやる。
かーっと見る見るうちに赤くなる真島の顔。
照れてる反応が一々面白くて、何度も同じことをしてしまう。
俺も相当真島バカになってきているらしい。
「うまいだろ」
「あ、味分かんないよ…ど、ドキドキしちゃって…っ」
「食わせ甲斐のない奴だな」
文句言いながらも楽しくてつい笑ってしまう。
俺が笑うと、真島はすげー嬉しそうな顔をする。
笑顔一つでこれ以上ないほど幸せそうな顔を見せる真島に、こっちまでつられて幸せな気持ちになる。
こうしていると、俺たちは本当に両想いなんだなって実感する。
好きな奴が自分の事をそれ以上に大好きだと言って夢中で愛してくれるなんて、こんな幸せはこの先二度と味わえないだろう。
教室棟から実習棟の方まで余す所なく見て回る。
真島は相変わらず途中で話し掛けられたりもしたが、腕章がないなら仕事は忘れたようで安定のバッサリとした「今話し掛けないで貰えるかな」で全対応していた。
まさか不良になるってこの事だろうか。
相変わらず意図の読めない発言だったが、真島の様子はさしていつもと変わらない。
「…お前強すぎるだろ」
「お、俺やったことあるから…っ、だから手加減するって――」
「そんな情け掛けたら余計にキレる」
ダーツをやってる教室で真島に勝負を持ちかけたら、一瞬で負けた。
おまけにいつの間にかギャラリーもわいていて完全に恥をかいた。
階段を降りながら、真島はごめんなさいとアタフタしながら何度も俺に謝ってくる。
こんなゲーム一つで俺が怒るワケもないが、少し拗ねた顔を見せたらあっという間に俺の機嫌を取る事に必死になっている。
堪えきれずプッと吹き出して笑顔を作れば、安心したようにふにゃっとだらしなく真島も顔を緩める。
「…可愛い。大好き。本当に大好き」
「だから口にでてる。胸の中にしまっとけ」
「えっ、ほんとだ出てた」
驚いたように口に手を当てている。
とはいえ俺も自分の教室で同じようなことをしてしまったから、真島のことをとやかく言えない。
どこか気恥ずかしい気持ちになりながら首を擦る。
「あー、もう。ほら、勝ったしお前の頼み一つ聞いてやる」
「えっ」
「勝負だしな。メシか?何が食いてーか言ってみ」
なんでも奢ってやるよと隣りにいる真島に視線を上げたら、その目がスッと色を変えたことに気づいた。
一瞬で真剣な顔になった真島に、ドクリと心臓が音を立てる。
「ずっと一緒にいたい」
真っ直ぐな視線が落ちてきた。
「頼みを聞いてくれるなら、俺は高瀬くんとずっと一緒にいたい」
――それは今、言っちゃダメだろ。
楽しかった気持ちが現実に引き戻されて、背筋に凍りつくような感覚が這い上がる。
同時にぶわっと必死に隠していたはずの気持ちが込み上げてきた。
心臓が掴まれるような痛みに苛まれて、その場から動けなくなる。
「――あ…ご、ごめん。冗談だよ。ごめんっ」
俺の雰囲気に何か察したらしい真島が、慌てたようにそう言う。
コイツは冗談なんか言わない。
真島が俺に対して全力で本気なことは、俺が一番分かっている。
「ご…ごめん。ごめんなさい…本当にごめんなさい…今のは…」
何も返せなかった。
せり上がる気持ちが瞬く間に目蓋を熱くさせ、俺は涙を堪えるのに必死だった。
「…う、噓でいいから…そんな顔、しないで…っ」
真島に言いたくない言葉を言わせている。
その事が余計に俺の心を傷ませた。
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