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すっかり意気消沈してしまった俺の手を引いて、真島は体育館へ来た。
余計なことを言ったら涙が零れそうで、今は何言ってんだと茶化してやる余裕もなかった。
俺はもう、あんな言葉の一つ簡単にかわせないほど真島を好きになってしまっている。
気持ちを隠さなければと、整理しなければと思えば思うほど、それが障害のように気持ちが強くなっていってしまう。
こんなの、どうしたらいいんだ。
どうやって整理をつければいいんだ。
「高瀬くん、こっち」
真島に言われるままに足を動かす。
体育館の中はどっかのバンドが演奏中らしく、暗闇の中ステージ前でバカ騒ぎする身内ノリな奴らと、あとは興味なさげに椅子で居眠りしてる奴らだったりと疎らだった。
どこへ行っても大注目の真島も、さすがに暗闇では誰も気付いていないようだ。
手を引かれるまま誰もいない二階へ連れてこられると、手摺りで壁になっている場所に座らされる。
「…まし――」
そのまま覆いかぶさってきた真島に、キスをされた。
いつもキスする時も触る時も必ず俺の確認を取るか最初に謝るかしてくるから、突然のそれは初めてだった。
すぐに入り込んできた舌に口内を貪られながら、へったくそなバンドの歌をBGMに真島とキスをする。
まだ苦しい気持ちが収まりきらない内に深い愛情を与えられて、目が回りそうだった。
どうしようもなく全身が熱を持っていく。
好きだ。
真島が好きで好きで、もうどうしようもない。
両手を取られて、後ろの壁に押し付けられる。
指先を絡ませてきたが返せずにいたら、カプリと唇を甘噛された。
思わず力が入ってその手をキュッと握り返してしまう。
「…好き。高瀬くん。大好きだよ」
真島の切なげな視線が俺を捉えて、またたくさんの愛情を押し付けられるんだろうと覚悟する。
過剰な真島の愛情表現は幸せな気持ちにもなるが、その分酷く苦しくもなる。
何を言われても、俺が真島に返してやれる言葉なんかない。
行き場のない思いが、ただひたすらに俺の中に蓄積されていく。
苦しくて視線を俯かせたら、真島は俺の表情を見て優しく微笑む。
「…大丈夫。何も言わなくていいよ。もう、何も考えないでいいからね」
そう言って真島は、繋いでいた手を離して俺の両耳を塞いだ。
何も聞こえなくなった視線の先で、真島の唇が言葉を紡ぐ。
きっとたくさんの愛の言葉を言われているが、俺の耳には何も届かなかった。
それからまたキスをされる。
暗闇の中、呼吸が苦しくなるほど長いキスをし続けて、自分が今どこにいるのかもわからなくなりそうだった。
視覚も聴覚も奪われた世界で、ただひたすらに真島から与えられる愛情を無心で受け入れていた。
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