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激動の受験シーズンに入る11月。
綺麗にイチョウが色付き、少しずつ風が冷たくなる落葉の季節。
「…た…高瀬く…っ」
ぼろぼろと水溜りを作る勢いで、止め処なく涙が零れ落ちる。
本日の真島は今世紀最大の泣きっぷりだった。
あまりの泣きっぷりに一体何があったのかと驚くほどだ。
と言うかお前この間泣き虫をやめるとか宣言してなかったか。
不良になるだとか泣き虫をやめるだとか、一体どんな真島にバージョンアップしてしまうのかと思っていたが、安定のただの真島でどこか安心した。
むしろ泣き虫っぷりが逆にバージョンアップしてる気さえする。
「なに、今度はどうしたんだよ」
昼休みの屋上。
もう教室に来た瞬間にしゃくりをあげるレベルで目に涙を溜めていたから、慌てて屋上まで連れてきた。
だが真島は有無を言わさず俺を抱きしめて、何も口を開かない。
ずっと号泣している。
ここまでの泣きっぷりは言ったら、別れ話をした時レベルかもしれない。
「ほら、黙ってちゃ分かんねーよ」
「好き。大好きだよ…っ。大好きだからね…」
「うん、知ってるから。どうした」
「大好き…っ。だいすき…」
だが真島はずっと泣いたままで、結局理由は言わなかった。
そしてその日、真島は突然姿を消した。
「おい最低ウソツキ野郎。奏志に何をした。学校に来てねーんだが」
「――は?」
翌日の昼休み。
今日の弁当は何かなと呑気に思っていたところに、道場破りの如く貞男が勢いよく現れた。
その言葉に驚いたのはこっちだ。
学校に来てないとかこのクソ大事な時期に、アイツは一体何をやってるんだ。
「連絡は」
「したけど出ない。メッセも返ってこないし。お前朝一緒に登校してるだろ」
「今日は一緒にいけないって朝メッセ来たんだよ。休むとは言ってなかったけどな」
「…じゃ、じゃあ何かあったのか」
貞男があっという間に青い顔になる。
しょうがねーな、と俺は首を擦った。
「分かった。俺が連絡してみる」
真島に電話をかけて2秒以内に出なかったことは一度もない。
どうせすぐ出るだろと思ったが、あろうことか出なかった。
これはやばいかもしれない。
「…まさか死――」
「おい!縁起わりーこと言ってんじゃねーよっ」
つい口から滑り落ちそうになった言葉に、貞男が慌てたように噛み付く。
とりあえず作戦会議だ、と何の作戦だかわからないが、俺となぜかヒビヤンは貞男に引っ張られて食堂に集まった。
「よし梅乃、日比谷、今から会議を始める。まず奏志に一番最後に会ったのはいつだ」
「それより俺弁当ないんだけど。真島いねーと不便だな」
「おい」
「あ、高瀬金貸して、財布忘れた」
「おい」
「ふざけんなお前に貸すと漫画もエロ本もなんも返ってこねえ」
「――おいお前らっ」
貞男が赤い顔でなんか憤慨している。
うるせー奴だな。とりあえずメシくらい食わせろ。
結局ヒビヤンには貞男が金貸して、俺達はメシにありつく。
「よし、落ち着いたな。お前ら奏志に最後に会ったのは…」
「あれ、先輩達仲直りしたんすか?」
飯を食っていたら七海が顔を出した。
相変わらずどこか憎めない人懐っこそうな笑顔を浮かべている。
そういや俺と貞男が殴り合いの喧嘩をした時、止めたのは七海だったか。
もうすっかり傷はお互い癒えて、何の話だったかと今さら頭を捻るレベルだ。
「ああもうそんな事はどうでもいいっ。七海、お前もそこに座れ。ともかくお前ら俺の話を聞けっ――」
ついに貞男がキレた。
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