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仕方なく俺達は飯を食いながら貞男の声に耳を傾ける。
「いいか。奏志が突然姿を消したのは昨日の昼だ。午後の授業が始まるときには、もういなかった」
貞男が腕組みをして、カツカツと俺達の座るテーブルの周りを歩く。
まるで刑事ドラマか何かのようだ。
そんな話だっけ。
「風邪じゃねーの。早退したんだろ」
「さすが普通科に相応しき低脳だな日比谷。奏志が黙って早退なんてするわけないだろう」
酷い言われようだ。
だがヒビヤンは全く気にしてないようでズルッと月見天ぷらうどんを啜っている。うまそう。
「いや待て。俺真島と昼休みは一緒に飯食ったぞ」
「そうか。梅乃、その時奏志の様子に変わりはなかったか?」
「大泣きしてたな。くっそやばいくらいに」
「変わりありまくりじゃねーか!なんで早く言わねーんだっ」
ガタッとテーブルに手をついて乗り出すように貞男に言われた。
そんなこと言われても理由知らねーし。
ぶっちゃけアイツが甘えたように泣きつくことは今に始まったことでもない。
とはいえ昨日のアレは、甘えたってレベルじゃなかったか。
「えっ、そんなことより俺は真島先輩が泣くという事実に驚いてるんすけど…なんか萌えますね」
変態は放っておこう。
「でも昨日の朝一緒に登校した時は別に普通だったな」
「ということは昨日の昼休み前に何かあったってことか…」
「あっ、そういや」
そこで声をあげたのはヒビヤンだった。
「俺真島見たな。昨日の授業中」
「――なに?」
貞男の目が鋭くヒビヤンに向けられる。
気付けば貞男はまるで敏腕捜査官の如く、メモ帳まで取り出して何か書き記している。
「あれは4限目だったかな。窓からグラウンドを走ってる真島が見えた」
「そりゃ体育だろ」
そうツッコんだら、貞男は顎に手を当てて何か考え込む。
「いや違う。体育は3限にあってしかも体育館だった。4限は選択授業だったから、奏志と同じ授業を受けてないんだよな。…ということは4限の授業中になにかあったって事か…?」
貞男が腕を組んで考えている。
全く分からない。
というか真島の行動なんてそもそも分かるはずがない。
そう思ってから、俺はふと気づく。
それでも真島が取るおかしな行動の全ては、俺が原因だったような。
「そういや俺も真島先輩見ましたよ」
「なに?」
「昨日の放課後、教室前の廊下で見ました。一瞬でいなくなっちゃいましたけど」
「…二年の教室?何の用だ」
「さあ。でも先輩声かけたのに気付かないし、まあ女子が相当騒いでたから聞こえなかっただけかもしれないっすけど」
貞男は全ての情報をメモに記すと、何か決めたようにバン、と机を叩いた。
「よし、ならこれより聞き込み調査を始める。日比谷は一年、七海は二年、梅乃は三年の各教室で目撃情報を当たってくれ」
「おいふざけんな。貞男は何してんだよ」
「俺は司令塔だ。司令塔が動き回るなんて話は聞いたことがない」
至極当然と言った様子で言われた。
一瞬でアホらしくなってきた感じはあるが、それでも真島からの連絡は未だない。
そんなことは今までなかったし、昨日のあの見事なまでの泣きっぷりも気になる。
仕方なく貞男に協力してやるかと俺は聞き込み調査を開始して、ものの5分で飽きた。
さっさと特進科の教室前で待機している、貞男と落ち合う。
「おい、七海はどうした」
「知らん。飽きたんだろ」
そう言ったら貞男はぐっ、と拳を握る。
その拳で今度は七海をぶん殴りに行きそうだ。
「おう。真島の目撃情報ならかなりあったぞ」
「なに、でかした日比谷」
ヒビヤンはそのかわり今日の昼飯代奢りな、とセコいことを付け足してから情報を開示する。
コイツ金持ちじゃねーのかよ。
「まあ一言で言うと、あっちこっちで見たってさ」
「――は?」
「学校全域で目撃情報ありって話」
ついに真島は分身をマスターしたか。
と、くだらない事を思いながらふわあっと欠伸をする。
飯も食ったし眠くなってきた。
そう思いながら口に当てた手を下ろそうとした時、俺はあっさり気付いた。
それはもう、驚くほどあっけない程に。
「あ、俺真島がいなくなった理由分かったわ」
「――え!?」
貞男に胸ぐらを掴まれる。
コイツまた俺を殴る気じゃねーだろうな。
「や…やっぱりお前のせいか…っ」
「いや俺のせいじゃねーよ。まあ確信はねーけど、今日中にお前に顔見せろって言っとくわ」
予鈴も鳴ったし俺はポカンとした顔の貞男にそう言って、ヒビヤンと一緒に教室へ戻る。
「で、結局なんなんだ?」
「…まあ、お前らにとってはくだらない理由だよ」
「ふーん、ならお前にとってはどうでもよくないんだ?」
「どうだろうな。俺は…逆に良かったと思えるかな」
「ぜんっぜん意味分かんね」
そりゃそうだ。
ここまでで分かった奴がいたら、そいつは間違いなく俺と真島のストーカーだ。
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