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かなり強めに噛んでしまったのに、奏志は優しく俺の耳朶に吸い付く。
まるで俺が噛んだ痛みすら愛しいと言うように、舌先で耳をくすぐられた。
「――っは…っ」
俺の中に埋められた指が、言葉にならない快感を身体に与えてくる。
ぼろぼろと涙が溢れ、落ちた涙の雫に口付けて舐め取られる。
息も絶え絶えになりながら、自分の中に増やされていく指の感触を奏志の指を噛みながらひたすらに受け入れる。
「はぁ…梅乃くんがすごく可愛くて…く、苦しいよ」
苦しいのは俺の方なんだが。
だが耳元に落ちてくる奏志の声は熱を含んで上擦っていて、必死に肩で呼吸をしている。
さっきから俺の腰に主張するように硬くなっているものを、グイグイと押し付けられている。
初めて身体を重ねた日以来、コイツが最後までしてくることはなかった。
思い出してもかなり苦しかったし、俺としても正直まだ勇気いることではある。
それでも今更コイツにだったら、何をされてもいいという覚悟はある。
「――あっ…はぁ…い、挿れんの」
「……っ大丈夫だからね。こ、怖いことこれ以上はしないからね」
「怖いことって…」
は、と気づく。
もしかしてチ◯コ突っ込むか突っ込まねーかの話かよ。
こんなしっかりと受け入れるために後ろを解されて、ヒクヒクと震えるまでに快感を植え付けておいて、どう考えても臨戦態勢なモンを人に押し付けておいて、それでも我慢すんのかよ。
奏志の顔を見上げると、色のない瞳が切羽詰ったように俺の身体をかき抱く。
「梅乃くんの気持ちいいことしかしないからね。愛してるんだよ。二人でいないといけないんだよ」
必死に言い聞かせるようにそう言ってくる。
なんだかまるで今のコイツは、俺に別れられることをどうしようもなく怯えていた最初の頃のようだ。
力の入らない手を、そっと奏志へと伸ばす。
「ずっと一緒にいないといけないんだよ。大好きだから…う、梅乃くんも俺を好きでいないといけないんだよ。嫌いになっちゃダメなんだよ」
奏志の頬に触れたら、ビクリとその肩が驚くほど跳ねた。
怯えたような視線が降りてきて、俺は安心させるようにゆるりと頬を優しく撫でた。
「…ごめんな。お前、不安だったんだろ」
どこか心ここにあらずだった瞳に、ふと光が戻る。
何か張り詰めていたものが切れたように、ぼろりとその瞳から涙が溢れた。
ああ、また俺はコイツを泣かせてしまった。
「き、嫌いにならないで…っ。捨てないで…。俺には梅乃くんしかいなくて…っ」
「大丈夫。知ってるよ。なんでいきなりそんな発想になったんだよ」
「お、俺が梅乃くんに触ると、良いことがおこらなくて…っ。我慢できなくなっちゃうから、たくさん困らせちゃって――」
「…そんなことねーけど」
「あ、あるんだ…。この間も触りすぎて帰れって言われちゃったし…そ、その前も梅乃くんに怖いことしちゃって…。梅乃くんに嫌われちゃったら、俺もう生きていけないんだ。人生終わりだから、その…失敗しちゃいけなくて…」
大袈裟すぎる言葉だが、コイツに限ってそれは全く大袈裟でないから笑えない。
この間帰れって言ったのはコイツが香水の匂いさせてたからだが、そこまでわかりやすく突き放した覚えはない。
それでもまさかここまで気にしているとは思わなかった。
「…卒業式で、俺お前と生きていくって言ったよな」
「う、うん。俺すごい幸せで…。失ったらどうしようって怖くなっちゃって」
「それは…分かるけど」
「こ、高校の時のほうが梅乃くんに酷いことしなかったから…っ。だ、だから我慢したほうがいいって」
ああ、なるほど。だからの我慢大会か。
考えてみればコイツは高校時代もずっとそんなようなやつだった。
俺の心が手に入らなくなったらと、身体を重ねることをひたすらに我慢していた。
我慢と不安がきっと積もりに積もって爆発した結果、今の状況になったんだろう。
「お、俺はそばにいられればいいんだ。触れなくてもいいんだ。だけど梅乃くんと離れるのだけは絶対に嫌だよ…っ」
こんだけ今人をグダグダにするほど触りまくってたくせに、奏志はボロボロと高校時代のように涙を流す。
もう大学生になったのに、コイツの泣き虫は相変わらずだ。
散々イかされたせいで身体はクタクタだったが、それでもコイツにここまで考えさせてしまったのは、俺がここ最近のフォローを後回しにし続けてしまったせいもあるだろう。
それに好きな奴をこんな風に泣かせたまま、放っておくことなんてできない。
「…俺はやだよ。そばにいるだけとか」
「――えっ」
「ちゃんと触りたいし、キスもしたいし、それ以上だってしたい」
「う、梅乃く…」
「だからいいよ。怖いことしてくれて」
そう言ったら、奏志の目が見開く。
俺はなんでこんなにコイツに甘くなってしまったんだ。
さっきの行為には若干怒っていい気すらするし、そもそもなんで当たり前のように俺が掘られる側なんだということにまだ納得していない部分もある。
だがそれ以上にコイツを悲しませたくないという気持ちの方が勝る。
「あ、あのっ。あの、ダメだよ。俺また酷いことしちゃうよ」
「…あー、出来ればゆっくりがいいけど――」
「ダメだよ。い、今は出来るか自信ないから、やっぱりダメだよっ」
って言いながらもうベルト外し始めてんじゃねーか。
心と体が正反対すぎだろ。
それでもコイツの心の方はまだ陥落してないらしく、慌てたように俺の顔を見る。
「に、逃げてっ。怖いことしたくない…っ」
「ばーか、逃げも隠れもしねーよ。お前の面倒は俺がちゃんと見てやるから、安心しろ」
そう言って奏志の首に両手を回す。
悪戯にコイツの大好きだと言う笑顔で微笑んでやった。
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