アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
番外編『それぞれの未来』
-
5月のGW。
奏志も俺も連休で、もう当然のようにアイツは朝から俺の家に来ていた。
来たのは分かったが、勝手に色々やってるのは相変わらずだし気にせず爆睡する。
不意にベッドが沈み込んで、うっすらと意識が浮上する。
奏志が乗り上げてきたんだろう。
髪の毛を撫でられて、目を明けぬまま寝ぼけ眼でその身体を手繰り寄せる。
「…んー。まだ眠い」
布団に引っ張り込んで抱き枕代わりにその身体を抱き締めたら、優しく抱き締め返されてその温もりにホッとする。
珍しく鼻息も荒くないし、なんだか今日は落ち着いた感じで柔らかく髪を撫でられる。
いつも「ゆっくり寝てね」とか言いながらスンスン人の匂い嗅いでハアハアし始めるから逆に目が覚めるんだが、今日に限ってその指先が甘やかすように俺の目元を擽る。
優しい感触になんだかドキドキとした。
どこか余裕溢れるその態度に安心して、甘えるようにその胸に鼻先を擦り付ける。
切羽詰まるでもなく落ち着いて応えるように耳を撫でられて、堪らなく愛しい気持ちが溢れる。
好きだ、なんて思ってしまう。
色々変態な面もあるけど、それでもやっぱりコイツが好きで、言わないけど俺にはコイツしかいない。
いつも余裕がないコイツだが、俺だってちゃんと好きなんだからたまにはこうやって余裕ある態度をとってくれたら素直に甘えられる。
眠気もあってただ何も言わず胸に顔を寄せて甘えていたら、ちゃんと包み込むように応えてくれた。
だがふといつもと違う爽やかな男物の香水の香りがして、あれ?と夢うつつに思う。
違和感に身じろいだが、優しく背を撫でられてとろりと再び目蓋が落ちた。
「――っ!?な、何してるのっ!?」
――と、突然奏志の叫び声がした。
それも随分離れた位置から。
おかしいなと目を開けて顔をあげたら、すぐ近くに一ヶ月ぶりの顔があった。
「よー、高瀬。久しぶり」
「…えっ」
抱き枕は奏志ではなくヒビヤンだった。
「わりわり、起こしてやろうと思ったら甘えてきたから、つい」
「つい、じゃねーよ。どんな登場の仕方だ」
「…お、お部屋に通さなければ良かった…」
ブツブツと膝をついてガックリと落ち込んでる奏志の横で、俺とヒビヤンは朝食を食う。
というか何ちゃっかりお前も食ってんだ。
「高瀬が泣きついてこねーからたぶん真島とうまくいったんだろうなって思ってたけど、まさか同棲してると思わなかったわ」
「してねーよ。休みだから遊びにきてんだよ」
「へー。じゃあ泊まっても大丈夫だな」
「え」
ちらりと見たら旅行バッグがしっかり置いてある。
まあこっちに友達がいて、しかも家族がうるさくない俺とあればそりゃ宿代わりにもするよな。
別に何の問題もないし、それに一ヶ月ぶりに会えて嬉しい気持ちもある。
「おー、いいけ――」
「だ、ダメっ。絶対ダメだよっ」
勢いよく奏志が割り込んできた。
なぜか青い顔して俺とヒビヤンの顔を交互に見ている。
「なに、高瀬が心配?相変わらずイケメンのくせに余裕ねーな」
「さっき梅乃くんにあんなことしておいて、二人きりにさせるわけにはいかないよ」
「…梅乃?ああ、へえ――」
何か含んだような顔でヒビヤンが俺を見てきたから、ギクリとする。
絶対茶化してきそうな視線に覚悟はしたが、ヒビヤンは特に気にしたような素振りを見せず言葉を続けた。
「別にさっきのはただの冗談だろ。…まあいいや、じゃあ決まり。真島も一緒に泊まれば問題ねーな」
「――えっ?えっ…と…それは…。い、いいのかな」
ちらちらと俺を見てあっという間に嬉しそうな顔になっている。
丸め込まれんのはえーなおい。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
225 / 251