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夕方の便でヒビヤンは帰ってしまうらしく、それまで俺達はアレという名のゲームをして遊んだ。
「目が悪くなっちゃうからね。あまりゲームは長い時間やったらダメだよ」
「えー。今日くらいいいだろ。ヒビヤン来てるし」
「いいだろ高瀬んち来てるし」
掃除機を掛けながら奏志に言われて、ゲームをとりあげられそうになった子供のごとくヒビヤンとゴネる。
「う…じゃあ今日はもう少しだけだよ。でもちゃんと休憩挟んでね」
完全に母親と子供二人だが、よっしゃと俺達は再び夢中になって遊ぶ。
ヒビヤンに厳重注意してから奏志は買い物へ向かって、俺達はゲームして時間を潰していた。
「もう真島と一緒に暮らせばよくね。俺も一緒に住みたいくらい快適なんだけど」
「朝起きてボケっとしてると全部身支度終わってることあるぞ」
「どんだけダメ人間製造機なんだ」
テレビ画面を見つつ、二人でピコピコとコントローラーを弄る。
「…まあでもお前が泣いてなくてよかったよ。卒業式前の高瀬はちょっと見てられなかったからな」
隣でどこか苦く笑われる。
こんな話を振ってきたのは、今奏志がいないからだろう。
確かに自分でも卒業式前は本当に苦しかった記憶しかない。
ヒビヤンに涙を見られるレベルには俺もいっぱいいっぱいだった。
「つっても社会人と大学生でまた環境変わって、どうなるのか分かんねえけどな」
「お前が何言っても真島がもう離さねーだろ」
「はは…まあアイツはちょっとおかしいんだよ」
実際これは比喩ではなく本気でおかしいと思う。
俺への執着心が半端ない。
一般的に人が人を好きになる度合いを越えているような気がする。
「…正直俺は、今でもアイツは俺じゃなくちゃんと女と付き合ったほうが良いと思うし、男でも俺じゃなくアイツに見合う奴はいっぱいいると思う。俺は結局別れたくなくて、卒業式に奏志を突き放せなかっただけで――」
奏志にも言えなかった言葉がでてきてしまう。
もちろんアイツとは一緒にいると決めているし、貞男に言った言葉も噓じゃない。
奏志は間違いなくこれからも、俺の全てを受け入れてくれるだろう。
だからこそ奏志には言えない。
アイツは俺が相談しても、絶対にこの関係性に否定的な言葉を口にしない。
客観的に見る言葉がほしい。
「…俺の言葉覚えてるか?」
不意にコントローラーを下げて、ヒビヤンが俺を見る。
ゲーム画面にはポーズの文字。
ヒビヤンに言われて思い悩んだ言葉はたくさんある。
修学旅行に言われた言葉、卒業式間近に言われた言葉。
俺を迷わせた、たくさんの言葉。
「俺はお前がどんな道を選んでも正解だって言ってやるといっただろ」
「…言われた」
コントローラーを持つ手元に視線を落として、唇を噛みしめる。
「大丈夫。お前は間違ってない。俺はいつだってお前の味方してやるよ」
普通とは違った道を歩き初めてしまった俺が、その言葉にどれほど救われるか分からない。
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