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「じゃーな高瀬、真島。次回は夏休みにでも会いにくるわ」
「おー…いや、今度は盆休みにでも俺が行くわ。北海道案内してくれ」
「マジで。部屋はいくらでもあるから宿代は考えなくていいぞ」
「すげーな金持ち」
暇だから駅まで奏志と見送りにきたが、俺とヒビヤンの話に奏志が真っ青になっている。
そんな顔しなくても別に一人で行くなんて言ってないし、勿論その時は俺が金だして奏志も連れてってやるつもりだ。
こういうところ社会人になると行動範囲が広がって楽しい。
「…あー、ありがとな。久々ヒビヤンに会えて楽しかったわ」
「素直かよ」
ヒビヤンの用事は本気で俺の顔を見に来ただけっぽいし、さっきの相談のこともあって一応礼を言っておくかと口にしたのに、冷静なツッコミが返ってきた。
「うるせーな。一応寂しがってんだよ。察しろ」
素直にそう言ったら、キョトンとした顔を向けられる。
だがすぐにその顔が、くしゃりと笑顔を作る。
「お前な、あんまり可愛いこと言うとお持ち帰りすんぞ」
悪戯に細められた視線と同時に、伸びてきた手にクイと顎をすくい取られた。
が、それはほんの一瞬で横から出てきた手がさっとその手を持ち上げる。
「させません。梅乃くんに触らないで下さい」
看守真島がヒビヤンの手を取り上げていた。
素晴らしきボディーガード並の速さだ。
電車の時間もあるから、ヒビヤンは「またな」と俺達二人に言って名残惜しげもなく背中を向けた。
去っていく後ろ姿を見つめていたら、学生時代に戻りたい、なんて思ってしまった。
もう帰ってくることのない日々だからこそ、余計にそう思えるんだろうけど。
「う、梅乃くん…やっぱり寂しい?お願いだからお持ち帰りされないで…っ」
奏志の声が落ちてきて、その顔を見上げる。
不安げに揺れる瞳が、懇願するように俺を見つめている。
「されるわけねーだろがアホ。ヒビヤンだって冗談だっつの」
「ええっ、ぜ、絶対冗談じゃなかったよっ」
「今のはお前がからかわれたんだよ。いい加減ヒビヤンの手法に慣れろ」
バカ正直すぎる。
いちいちヒビヤンの煽りに乗っかってアタフタするから、余計に楽しまれている。
「ち、違うよ。梅乃くんが自分の魅力に気付いてないだけだよ」
だがまだ信じていないらしく、食い下がってくる。
どうでもいい言い争いすぎるので、俺は帰ろうぜと奏志の手を引いた。
「別に俺の魅力なんて、お前だけが気付いていればいいよ」
そう言ってやったら、一度驚いた顔をされる。
それからニヘラとその表情がだらしなく緩んだ。
やっぱりコイツの機嫌を取るのはチョロすぎる。
家に帰ったら、玄関先で抱きしめられた。
いや正確には、もうエレベーター乗ってる時に抱きしめられて一度引き剥がした。
「梅乃くん、大好き。可愛い。愛してる…っ」
今日はいつにも増して余裕がなさそうだ。
せっかく休みだったのにヒビヤンがいてお預けくらってたからだろう。
もうぎゅうぎゅう抱きしめられて、可愛い可愛いと頬擦りされる。
安定の俺バカだ。
「あ…っ、こらお前」
すぐに服の中に入れられた手が、俺の身体を荒々しく撫でる。
余裕なく全身で大好きなんだと訴えるような愛情表現に、思わずふふと笑ってしまった。
「…あ、あれ、どうしたの?」
「…ああ、いや」
「あ、あのね。梅乃くん。俺は――」
何か言いたいことがあるらしいが、我慢出来ないという様子でキスをされた。
同じ触れ方にしても、ヒビヤンとはエライ違いだ。
話したいことがたくさんあるのに、触れたい気持ちが先立ってしまっているらしい。
「…っは、梅乃くん」
「…ん、なに――」
また何か言おうとしたが、やはり何も聞けずに再び唇を塞がれる。
言葉を交わす暇も惜しいらしい。
驚きに引っ込ませた舌を引きずり出されて、しっかりと舌を絡め取られる。
ビリビリと背筋が痺れて、堪らず奏志の身体に縋り付いた。
「…――わっ」
不意に奏志の肩に乗せられる形で、思いっきり抱え上げられる。
完全に宙に浮いた身体に、思わず足をバタつかせる。
同い年なのになんでこんなに体格違うんだ。
奏志は有無を言わせず俺を自室に運ぶと、優しくベッドに俺の身体を下ろした。
余裕なんか一つもない顔で、すぐにシーツを沈み込ませて俺に伸し掛かってくる。
再びキスしようとしてきたから、ちょっとまてとその身体を押す。
言わなくても大好きなんだと必死に訴える瞳が、切なげに落ちてくる。
「な、何もしないよ。少し触るだけだよ」
もういっそコイツの中ではどこから何かしてるということになるんだろう。
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