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待てと押し止められて、不安げに目の前の瞳が揺れる。
コイツは本当に俺のことが好きなんだなと、もう何度も分かっているはずなのに改めて思ってしまう。
「そんなに焦らなくても俺はどこにも行かねーよ」
「……っ」
手を伸ばしてその頬に触れたら、奏志が息を詰める。
どこか酷く焦っていた表情が、ほんの少し落ち着きを取り戻していく。
「ほら、何か言いたいことがあるんだろ。言ってみ」
さっきから俺に必死に言おうとしている言葉があるのに、焦る気持ちのせいで聞けない。
促してやったら、一度視線を彷徨わせてから俺を見下ろした。
「…ひ、日比谷くんにたくさん触られてて…その」
「さっきも言っただろ。あれはお前がからかわれてただけなんだよ」
「それでも…嫌なんだ。俺は梅乃くんを誰にも触らせたくない…っ」
そう言って抱きしめられた。
力強いその腕に、ドキリと心臓が跳ねる。
相変わらず酷い独占欲だが、いつになっても変わらない真っ直ぐな愛情に安心する。
奏志がこうやって俺を好きでいてくれるなら、俺はずっと一人じゃない。
コイツが俺を必要としてくれるうちは、その愛情に応えてやりたい。
俺を離さないと必死に抱きしめてくる背中を、ゆるりと撫でた。
「…大丈夫だから。俺もお前が好きだよ」
天井を見上げてぽつりと言った俺の言葉が、自室に響く。
ピッタリと俺に寄せられている奏志の身体が、息を詰めたように固まった。
コイツみたいに人の顔見たら挨拶みたいに好き好き言ったりはしないが、不安になっているならちゃんと伝えたい。
気持ちを口にしたら胸が震えて、たまらなく愛しい感情が込み上げてくる。
抱きしめられていて見えなかった顔が、不意にガバッと上げられた。
面白いほど真っ赤に染まる顔に見下ろされる。
「い、今…っ。今梅乃くん俺の事――」
「なに。好きだよ。お前が好き」
「――わっ、わっ…ご、ごめんなさいっ」
なんで謝られたんだ。
慌てたように奏志は俺の上から離れると、ベッドの縁に腰を下ろして両手で顔を覆う。
顔は隠れて見えないが、赤くなった耳はしっかりと見えている。
相当衝撃受けて喜んでいるらしいが、何も初めて言ったわけじゃないし、今更分かりきってることのはずだが。
「ど…っ、どうしよう。幸せすぎて死んじゃう。俺死んじゃうよっ…」
「それは困るな。お前にはまだ生きててもらわねーと」
俺は身体を起こすと、胸に手を当てて乙女モードになっている奏志の腕を引く。
今日こそコイツをグズグズのメロメロにしてやって、俺が襲ってやる。
今までなぜか俺が女役なんかさせられてたが、俺はまだ諦めてない。
赤くなってキャッキャしてる乙女奏志を、ベッドに組み敷く。
「…あれ、梅乃くん?」
ぽーっと惚けたように俺を見上げる顔が、キョトンとしたように小さく傾けられる。
いつも気付いたら組み敷かれているから、上から見下ろす光景は久しぶりな気がする。
え、ひょっとしたら女と付き合ってた時以来じゃね。
ぽかんとしながら見上げる顔に、安心させるように一度微笑んでやる。
「優しくしてやるよ」
そう言ってその唇にキスを落とした。
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