アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
番外編『懐かしの場所へ』
-
「うわ、七海返事はっや。奏志かよ」
蝉が鳴き始めた7月中旬。
今日は残業もなく仕事が終わり、夕暮れ時の道をスマホ片手に歩く。
「七海くんなんて言ってた?驚いたかなあ」
「ハートのスタンプめっちゃ来たから気持ちわりーって返しといた」
今日も周囲の視線をガン集めする変態イケメン王子は、俺を見下ろして幸せそうにふふ、と笑う。
俺が会う奴全員に嫉妬してスマホ鳴る度に不安な顔する嫉妬魔のくせに、相変わらず七海は許せるらしい。
コイツの基準がよく分からん。
一体なんの話をしているのかというと、少し前に俺のもとに高校の担任から連絡が来た。
何かと思えば、今受験を控える三年生のための進路指導説明会に参加してほしいとのことだった。
内容は主に面接で実際に聞かれたことや、勉強方法、職場に入ってからの経験談などなどまあ有りがちなやつを語ってほしいとのことで、卒業生が数人呼ばれているらしい。
そういや俺も三年の時にそんなのあったような。
とはいえなんで俺?と思ったが、俺は普通科の割には上場企業に就職したから、就職試験の経験談を話してほしいとのことだった。
正直頑張ったことなんて面接官の笑い取った思い出くらいしかない。
当然めんどいし断ろうと思ったが、俺と同じ学年でもう一人呼ばれている奴がいるという。
「嬉しいなあ。梅乃くんと一緒にまた学校に行けるなんて」
そう、特進科で学園のアイドル。誰もが驚く名門大学に進学した奴が、呼ばれてないはずがない。
同じ学年で呼ばれているのは俺達二人だけらしく、あとはもっと上の先輩方が数人呼ばれているんだとか。
小難しい話は先輩方や真島に任せて、俺は簡単な質疑応答にしてくれるというんでそれならやるかと了承した。
そんなわけで七海には事前に知らせといてやるかと久々にメッセを送ったわけだ。
「高校は本当に梅乃くんとの思い出がいっぱいだからなぁ。また行けるなんてすごく楽しみだなあ」
「つってもまだ卒業して4ヶ月しか経ってねーけどな」
「よ、4ヶ月も卒業してから梅乃くんとの時間が経っちゃってる…っ」
何か間違った方向に慌てふためいてるが、俺との時間を大切にしてくれてるっつー意味なら悪い気はしない。
俺に対する奏志の態度は相変わらずで、いやむしろ溺愛が酷くなっているような気さえする。
家にいる時は本気でべったりベタベタで、そのうちトイレまで着いてくるんじゃねーだろうなと思う始末。
猫が俺に懐いてるとさりげなく引き剥がしてはよく引っ掻かれている。
「…あ、えとね。梅乃くんと一緒にいるとすごく時間があっという間なんだよ。いつも幸せな時間をくれて本当にありがとう」
そう言って奏志は突然立ち止まると、ギュッと俺の両手を握る。
あまりに綺麗な笑顔で言われたからハッとしてしまうが、周囲を歩く人々がキャッキャと好機の目で俺達に注目している。
これだからイケメンはめんどくせえ。
「分かった分かった。そういうのは家帰ってからやってくれ」
「えっ、いいの?」
「なんでもいいよ。明日休みだし。一緒に風呂入るか?」
「えっ!?えっ!?だ、ダメだよ。さすがにそれは…っ」
完全に冗談で言ったんだが、返事の割には股間が全力で反応している。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
241 / 251