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「…あっ、あっ、出る…っ」
「梅乃くんっ、梅乃くん、好きっ」
「あぁっ…はぁ…っ」
「梅乃くんっ、大好き、愛してるっ」
「っちょ、あっ…――っていつまでやってんだよッ」
自分がイッたタイミングで悪いが思わずその頭を叩く。
頭真っ白で求められていたが、ハッとしたように奏志はキョロキョロと周りを見回した。
夕方だったはずがもう真っ暗もとっくにすぎて恐らく深夜ってところか。
「あ、あれっ?そんなに時間経ってたっ!?」
「経ってたっつーか…もう俺無理。なんも出ねー…お前元気すぎ…」
もう何回したか分からない。
今日こそは奏志が満足するまで付き合ってやろうと思ったら、コイツ全く満足しない。
マジで絶倫野郎なんだが。
「ダメだ…寝る…腹減った…眠い…」
「わっ、わっ、ごめんなさいっ。ご、ご飯作る。お風呂も入れますっ。お、お顔も綺麗にしますっ」
「おー…寝てるから勝手に全部やってくれ」
「うんっ」
奏志はぐったりする俺に嬉しそうに頷いて、ちゅっと一つキスを落とす。
それから自分のシャツを俺に掛けると、ズボンを履いて部屋を出ていった。
遠くでザーっという音が聞こえて、きっと浴室へ向かったんだろう。
ふわりと掛けられたシャツは奏志の匂いがいっぱいで、どことなく安心してしまう。
とろとろとしたまどろみの中であっという間に俺は眠りに落ちていった。
うっすらと目を開けると、いつの間にか奏志が湯船にいれてくれていた。
「あ、ごめんなさい。起こしちゃったかな」
濡れたタオルで顔を拭いてくれていて、ぼんやりとした意識の中でゆるりと首を振る。
「…ん、平気」
「寝てて大丈夫だよ。起こしちゃってごめんね」
優しく髪を撫でられてコクリと頷く。
とろりと落ちそうな目元にキスをされて、温かい感触にまた眠気が襲ってくる。
「…腹減った」
「うん、お腹空いたね。オムライス作ったよ。食べられそうだったら食べてね。口開けてくれれば食べさせてあげるよ」
俺は要介護者か。
コイツの天職はひょっとしたら介護士かもしれない。
「…あ、つかもうすぐバカ母帰ってくるかも」
「お母さんの分もご飯作ったよ。ピーマン嫌いって言ってたからちゃんとお母さんの分は抜いて作ったよ。梅乃くんのは入ってるからね。お野菜も食べようね」
姑に忠実な嫁かよ。
ぼんやりと話をしていたが、ツッコミどころがありすぎて眠気が覚めてきた。
ザバッと湯船から立ち上がると、キャッと奏志が顔を隠す。
いや指の隙間からめっちゃ見てるけど。
つかさっきまでセックス散々してたのに恥ずかしがってんじゃねえ。
「そういやお前に言うことあったんだわ。飯食いながら話す」
「――えっ」
あっという間に宇宙人に完全侵略された地球人の如く絶望した顔で見つめられた。
なんでコイツはすぐ考えが悪い方へといくんだ。
とろっとろの半熟卵がのっかったオムライスを口いっぱいに詰め込む。
めちゃくちゃ美味い。
やっぱりコイツの天職は料理人で間違いない。
「ふふ、落ち着いて食べてね。よく噛まないとダメだよ」
あいかわらずのオカン節をニコニコと目の前で言ってくるが、めちゃくちゃ腹減ってるし構わずガツガツと食う。
風の速さで平らげると、ぐでっとテーブルに頬をつけて寝そべった。
「はー、美味かった。もう腹いっぱい。寝る」
「ちゃんと歯磨きしないと虫歯になっちゃうよ。面倒だったら俺がやってあげるからね」
「自分でやるっつーの」
コイツに任せると本気でどこまでもやろうとする。
ちまちま飯食ってる奏志を置いて食器をまとめると、さっさとキッチンへと持っていく。
歯磨きしてから戻ってくるとまだ食ってた。
女子かお前は。
「おい」
「ひっ」
おばけでも見たような顔でビクリとされた。
え、なんで。
「なにビビってんの」
「…っあ、いや違くて」
ソワソワしてるから、あれと首を捻る。
満足したかどうかは分からないがあんなにさせてやって、まだなにかマイナスに考えることがあるのか。
「…ああ、話か。飯が美味すぎて忘れてた」
「ご、ごめんなさいっ。さっき怖いことしたの怒ってるんだよね。やりすぎちゃって…その」
「いや全然ちげーよ」
あっさりとそう言ったら、ビクビクしてた顔に思いっきりはてなマークが浮かび上がる。
やっぱり勘違いしてたか。
いやこのビビリ用と勘違いはどう考えてもダメだろ。
コイツと俺はもう二年も付き合って、あれだけエロいこともして、時間さえあればずっと一緒にいる。
それなのに奏志はいつまで経っても俺を誘うことすらままならなければ、いまだに緊張してるしすぐにマイナスに考える。
電車の中で言おうとしていたことも思い出して口を開く。
「…お前さ、もうちょっと自信もっていいけど」
「じ、自信?」
「俺に好かれてる自信」
そう言ったらカアッと顔に熱が上がっていく、だけどすぐに青くなっていく。
忙しいやつだな。
「…も、持てないよ。俺には梅乃くんだけなんだ。梅乃くんがいなくなったら人生終わりなんだ。なのにそんな自信持って調子乗ったことしちゃったら…」
「大丈夫。俺もお前がいなくなったら人生終わりだから」
人生終わりってすげー表現だな。
とは思うがあえてその言葉で返してやったのは、大げさじゃなく俺もそう思うからだ。
こんなズブズブに愛されて、いまさらコイツナシじゃ生きていけない。
「な、俺も終わりだから大丈夫。ほら、お前だってずっと俺に言いたかったことあんだろ」
自分から言ってやろうと思ったが、やめた。
コイツが自信つけるためにはきっと甘やかしたらダメなんだ。
もっと自信を持って、俺がいるのが当たり前なんだって思ってほしい。
せっかく卒業式も終えて俺達はずっと一緒にいる未来を選んだのに、コイツがずっと俺に別れられないかビビりっぱなしじゃ前と一緒だ。
「…梅乃くんはきっと俺がいなくても人生終わりなんかじゃないよ」
「え?」
呟いた言葉が聞き取れずに返したら、奏志はゆるゆると首を振った。
それから椅子に座ったまま隣に立っている俺の腰を引き寄せると、トンと身体に額を付ける。
「…好きです」
もうきっと何千何百回と聞いた言葉で、コイツも同じだけその言葉を言っている。
なのにまるで初めて言ったように耳まで赤くして俺に告白する。
それからそっと顔をあげた。
「…だ、だから」
奏志はそれでも言おうか言うまいか悩んでいる様子だ。
もうひと押し。
「ほら、なんでも言うこと聞いてやるから」
「――えっ」
あ、考えがエロい方にいった。
これはダメだったか。
ってまだする気あんのかコイツは。
それでもなんとか戻ってきたようで、身体を離すと俺の両手をギュッと握る。
落ち着かないように視線を彷徨わせたが、やっと覚悟したのかガバっと俺を見上げた。
「い、一緒に見に行こうっ。七海くんの試合っ」
ようやく出てきた言葉に思わず表情が破綻してしまう。
こんな笑っちゃうようなたった一言に、一体どれだけコイツの想いが込められているんだろう。
コクリと一つ頷いてから、めちゃくちゃに汗かいてる両手を握り返してやった。
「喜んで」
番外編【懐かしの場所へ】 完
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