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来たる翌日の昼休み。
4限の体育の授業を終えて教室前まで戻ってきたら、もう真島は教室前に待機していた。
「お、プリンス降臨じゃん。高瀬のこと待ってるんじゃね?」
横からニヤニヤと小突いてきたヒビヤンをスルーして、真島のところへ向かう。
あいつ俺と真島のことなんか面白がってるな。
茶化すのは好きだが、茶化されるのは好きじゃない。
「高瀬くん、体育だったんだね。あの、教室の窓から見えて…」
「ああ、短距離走やってた。なに、俺かっこよかった?」
冗談混じりに笑ってみせたが、真島はなんのひねりも含みもみせないまま大きくコクリと頷く。
「うん、すごいかっこよかった…!」
コイツ、本当に目腐ってんな。
体育とかめんどくせーしだらだらやってたから、何の活躍もしてなきゃかっこいい所なんて一つも見せてないんだが。
「…あー、飯持ってきた?」
とりあえず冗談の通じない真島は置いといて、今は昼飯の事を考えよう。
真島は機嫌良さそうに持っていた鞄を少し揺らしてみせる。
「うん。あ、他の友達も一緒に食べるよね」
「いや、今日は二人きりで食べたい。屋上いこうぜ。誰もいないと思うし」
「ふっ…二人きりでって…っ」
なんか真島がモゴモゴと言っているが、俺は気にせず帰ってきたその足で屋上へ向かうことにした。
屋上は基本解放されているが、わざわざ外で食べようなんて奴は今時いないらしい。
まあ外で食いたけりゃ学食にもテラスがあるし、なんでも今時女子は風が吹くと髪型崩れるし肌も乾燥するから嫌だとかなんだとか。
そんなわけで元カノに断られたことがある屋上だが、真島は喜んでついてきた。
この辺男だと気兼ねなくて楽だ。
ガチャリと扉を開けた屋上は、風もなく暖かい日差しでいっぱいだった。
案の定誰もいないその場所の、日当たりのいい壁際に陣取って俺達は腰を下ろす。
「高瀬くん。はい、お弁当。あの、上手く出来てるか心配だけど…」
おずおずと手渡された弁当箱は大きめで、遠慮なくカパッと蓋を開けたらめちゃくちゃ美味そうだった。
昨日に引き続き彩りはもちろん、俺のリクエストの『肉』は唐揚げという形で詰め込まれている。
体育後で腹も減っているし、さっそく『いただきます』と一言言って遠慮なくそれに手を付けた。
「あ、うまい。お前天才」
素直な感想。
パクパクとがっついてたら、水筒に作ってきたらしいお茶を手渡された。
飲んでみたら後味スッキリの紅茶だった。
何こいつ。女子より気が利くんだが。
「そんな風に食べてもらえるなんて、ほんと嬉しいなあ」
俺が食ってる横で、ニコニコと真島が綺麗な顔で笑う。
飯食ってる俺より幸せそうな顔すんな。
暑くもなく寒くもなく、のんびりとした6月中旬の風が過ぎていく。
綺麗に弁当を完食したら、天気もいいし眠くなってきた。
横になってちょい寝ようかなと思ったが、そういや体育の授業後そのまま屋上に来たせいで、鞄どころか財布も持ってきていないことに気付く。
さすがにこの場所でゴロンと横になるには、枕が欲しい。
「お、あるじゃん枕。ちょっと貸して」
「え?――わっ!」
ごろんと横になる。
そして頭は真島の太腿へ。
男の膝枕とかクッソ寒いが、誰もいないし枕無いよりマシだ。
「ちょっ…、高瀬く…」
「なんだよ。別にいーだろ。付き合ってんだし」
これを言うと真島は黙る。
案の定真っ赤な顔で、口をパクパクさせながら押し黙った。
それを片目で確認して、ふわあと欠伸をひとつ。
そんなわけで別れ話より眠気が勝って、俺は安眠という有意義な昼休みを過ごしてしまった。
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