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珍しくその日の放課後、真島は姿を見せなかった。
別に約束しているわけでもないし、授業終わったら俺はとっとと帰りたい。
だから真島が来なくてもなんということもないが、やっぱり今日の昼休みの事を気にしてるんだろうか。
押し倒されて、実際予想外過ぎて動揺したのは事実だ。
が、別にきゃーとか言って少女漫画のように走り去ったわけでもないし、何事もなかったようにしたつもりだったが。
昇降口で靴を履き替えていると、「うめのーん」と声を掛けられた。
うわ、咲希ちゃんの友達だ。
ひょっとして文句言われんのか俺。
若干身構えたが、女友達は予想していたような表情ではなかった。
「今帰り?今日はどこも行かないの?」
「おー。これからバイトあるし」
「あ、バイトかあ。んー、少しでいいんだけど時間ない?」
「え?まあ少しなら…」
なんだろうと思ったら、ガシッと手を掴まれた。
いきなりなんだ。
「じゃあちょっと協力よろしくっ」
「――はあ?」
そのまま手を引っ張られる。
行く先も分からない場所に有無を言わせず強制連行だが、それでも女にされるなら悪い気はしない。
と、思ったのはほんの一瞬で、俺は辿り着いた先で潔く事情を理解した。
「…ああ、なるほどな」
わいわいと暇な女子で賑わう、黄色い声響くその場所。
体育館だ。
「ほら、うめのんいると話せるかもだしー」
「よし、帰るわ」
「あ、そういえばうめのん。咲希のこと気を持たせといて断ったらしいじゃん。他の女子にも噂広めちゃおっかなあ」
帰ろうとしたら、ニコニコと可愛らしい表情で怖いことを言われた。
俺の友達ってほんとろくな奴がいないな。
「まあちょっとでいいからさ。今日バスケ部練習試合やるって聞いてさあ。ほら、試合ならうめのんも楽しめるんじゃない?」
「いや俺バイトあるし。試合途中で帰るとか一番続き気になるやつだろ」
「まあまあ。あっ、ほら出てきた」
くいと服の袖を引っ張られる。
つられて視線を向ければ、バスケのユニフォームにジャージを引っ掛けた真島がチームメイトと話しながら出てきたところだった。
周りの女子が色めきだつが、本人は周囲を全く気にしてない様子だ。
恐らくそれが当たり前の環境になっているんだろう。
芸能人かお前は。
「こっち向かないかなー。うめのん、声掛けてよ」
「はあ?絶対嫌だ」
「まあでも試合前だし、迷惑になっちゃうか。もうちょっと見やすい場所ないかなあ」
キョロキョロと女友達が周囲を見回すが、どこも女子で溢れかえっていた。
俺としては真島に気付かれたくないから、ちょうどいいが。
そうこうしているうちに練習相手のチームと合流して、さっそく試合は始まった。
俺のバスケの知識は球技大会と有名バスケ漫画くらいのモンだが、見ている分には初心者でもスポーツは楽しい。
それに俺と一緒にいない時の真島を、わざわざ意識して見るのは初めてだった。
「もおー、プリンス超かっこいいんだけど。やばいー」
隣で興奮したようにはしゃぐ女友達の声。
確かに真島は格好良かった。
鮮やかなボールさばきや、手に吸い付いていくようなドリブル。
スティールをかわし放たれたボールは、パサリと網の音だけ響かせてゴールに吸い込まれていった。
待ち望んでいたように沸き上がる歓声。
なるほど。これはモテる。
おまけに見た目の華やかさも相まって、オーラがあるというか。
いつも俺が見ている真島とは、全くの別人みたいだった。
俺の前ではいつだってビクビクして挙動不審だし、常に人の顔色を伺っている。
でもよく考えれば、告白されるまでは俺も普通に真島のことを万能イケメンだと思ってたんだよな。
つまり一言で言うと、俺を見ていない時の真島はかっこいい。
やっぱり俺って真島にとっての短所じゃねーか。
なんて再確認したが、まあそんなことは知ったこっちゃない。
真島がドリブルしながら再びゴールを目指す。
カットにきた相手をターンでかわし、次いで止めに来た二人目のマークにフェイントをかけてから、味方にパス。
隙をついてマークをすり抜け、敵陣ゴール下まできた、その時だった。
パスを貰おうと味方に呼びかけた、真島の視線の先。
俺と、目が合った。
「――えっ?たっ…たか…っ」
その目が驚愕に見開かれて、みるみるうちに顔が赤くなる。
――瞬間、味方のパスが真島の横っ面に直撃した。
あ、一気にかっこ悪くなった。
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