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「明日弁当いらねーから」
「えっ?」
とある日の放課後。
いつも通り部活前に俺の顔を見に来たらしい真島に、俺は鞄を肩に引っさげながら告げる。
今日バイトだし急いでるんだよな。
「えっと…俺なにかしたかな」
ああもう、こいつ。
言葉足りないとすぐマイナスに考えるな。
あっという間に人生終わりみたいな顔してる真島に、一つため息を吐く。
「ちげーよ。友達に飯一緒に食おうって誘われてんの。なんか相談あるらしいからさ、お前がいたら向こうも相談しづらいだろ」
「…あ、そっか。そういうことか。うん。分かった」
「まったく」
しょうがねーな、と少し高い位置にある真島の頭をポンと叩いてやる。
真島は照れたようにはにかんで笑った。
「へー。ふーん。なるほどなるほど。じゃーな。高瀬、真島」
その後ろをヒビヤンがニヤニヤと通り過ぎていった。
マジであいつ鬱陶しいな。
実はその相談相手というのは亜美ちゃんのことだ。
だからこそ余計に真島を誘うわけにはいかない。
ハッキリ言ってかなり面倒なんだが、キラキラした目で女の子に頼まれたら俺が断れるはずもなく。
「うめちゃん」
ポニーテールがさらさらと揺れる。
翌日、亜美ちゃんとは食堂で飯を食う約束をして、天気もいいのでテラスへ行こうとなった。
真島の相談でもなければ、女の子と二人で昼食とか最高なんだが。
真島の弁当以外の昼飯は久しぶりで、俺は券売機で何を買うかなーなんて無駄に悩む。
結局日替わりランチを頼んで、それをトレイに乗せながらテラスへ向かった。
「今日の日替わりランチ、親子丼なんだね。美味しそう」
「一口食う?亜美ちゃん弁当持参なんだ」
「やったあ。じゃあ卵焼きあげるね」
このやり取り、傍から見たらどう見ても恋人だよな。
なんて内心ニヤつきながら食った卵焼きだが、無意識に真島にWINを付けていた。
俺ひょっとして真島に胃袋掴まれてるんだろうか。
「あのね、勉強会でも思ったけど、うめちゃんて本当話しやすいよね。親しみやすいっていうか」
「そうか?亜美ちゃんが話しやすいからだと思うけどな」
ニコリと笑って返すが、正直そんな『良い人』止まりな発言は望んじゃいない。
くそ、真島のアレがなかったら今頃俺と亜美ちゃんがいい感じになっている予定だったかもしれないのに。
「で?真島の何が聞きたいんだ?」
もうさっさと話を促してやる。
正直協力するつもりはないから、知らぬ存ぜぬでさっくり終わらせよう。
というか実際、真島のことは俺だってあまり知らない。
アイツのことで知っているのは、理由は分からんが俺を好きなこと、くらいだ。
「んーと、知りたいことはもういいんだ。こっちばっかり知っても意味ないもん。だから今度は、私の事を知ってもらおうと思って」
「…なるほど。で?」
「えっと、遊びに行きたいんだよね。一緒に」
上目遣いで見つめられた。
なるほど、つまり俺を介して真島を誘ってほしいということか。
正直マジでやる気なさすぎる。
「あのね。もう一人友達連れてくるから、真島くん誘ってもらえないかなあ。四人でどっか遊びに行けたらって…」
「よし、のった」
ナイス、亜美ちゃん。
それなら俺にも得がある。
その後一瞬でのり気になった俺と、どこへ遊びに行くかと話は盛り上がった。
こう言っちゃなんだが、亜美ちゃんは俺に関わる友達にしてはかなりいい子だった。
多少打算的なところはあっても、純粋に、ただ誠実に真島の事が好きなんだという気持ちが伝わってくる。
俺は亜美ちゃんの真っ直ぐな笑顔に、珍しくほんの少しの罪悪感という気持ちを感じてしまっていた。
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