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----side 真島『天国と地獄』
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俺が思うほど高瀬くんが俺のことを好きじゃないことなんて、ちゃんと知っている。
というか自分の気持ちがあまりにも大きすぎて、高瀬くんに迷惑を掛けてしまっていることだって分かっている。
もっと心に余裕があれば。
気の利いた会話の一つでも振ることが出来れば。
彼の気持ちを少しでも察してあげることが出来れば。
それなのに、俺はいつだって自分の事でいっぱいいっぱいだった。
その上最近は高瀬くんに誰かが触れるだけで、抑えきれないほど真っ黒な気持ちになる。
彼の近くにいれるだけで幸せだと思っていたはずなのに、彼を独占したいなんて身の程知らずな感情までわいてきてしまった。
「…パレード、俺と見たかったんじゃねーの」
「――えっ?見たいよ、もちろん」
どこか高瀬くんは俺に物言いたそうな顔だったけど、ふいと何も言わずに正面に顔を向けた。
その横顔にまた魅入ってしまう。
高瀬くんの言葉の意図を理解しているようでいて、俺は全く理解できていなかった。
パレードはもちろん見たいけど、それより惹きつけられてやまない相手が、すぐ隣りにいる。
大好きな人が隣にいるだけで、もう天にも上るような気持ちで、のぼせたように頭がぼーっとした。
少しでいい。どこでもいいから彼に触れたいと思って掴んだ服の裾は、ちょっとだけと言ったはずなのに全く離せなかった。
頭の芯が焼ききれてしまいそうなほど、好きで好きでどうしようもない気持ちは、高瀬くんの行動一つで地獄から天国までを一瞬で駆け抜ける。
色々あった一日だったけど、最後に高瀬くんが「俺と見よう」と言ってくれたから今はこんなに幸せな気持ちでいられる。
もしまた何かしてしまったら、ということを考えるとすごく怖いけど、それでも彼を求める気持ちは全く止まなかった。
遊園地からの帰り道、家まで高瀬くんを送りたいと言ったら、勝手にしろと言われた。
断られなかったことにホッとする。
少しでも、一分一秒だっていいから一緒にいたい。
「なんか男に送られるとか俺初めてだわ。男って襲う側じゃねーの」
変な奴、と高瀬くんは俺に笑う。
俺に笑いかけてくれてるというだけで、胸がぎゅうっと締め付けられる。
「…た、高瀬くんは可愛いから」
「はあ?」
一気にその瞳が不機嫌そうに歪められる。
しまった。何か今のは失言だったか。
俺の目に映る高瀬くんは、眩しいほどかっこよくて、堪らなくなるほど可愛い。
褒めたつもりだったのに、なんでそんな反応をさせてしまったんだろう。
「一応確認しとくが、お前俺の事女だと思ってないよな?」
「えっ?思ってないよ。なんでそんなこと…」
高瀬くんの言葉の意味が理解できない。
俺の表情に高瀬くんは呆れたように一つ息を吐き出すと、視線を前に向けた。
どうしよう。また何か怒らせてしまったかもしれない。
嫌われたくないと思えば思うほど、うまくいかない。
気の利いた言葉の一つも出てこなくて、こういう時例えば高瀬くんの友達の日比谷くんなら、すぐに彼を喜ばせてあげられるんだろうか。
「真島」
ビクリと俺は肩を揺らす。
嫌われたくない。
けれど今の失敗で、また突き放されるかもしれない。
高瀬くんの言葉をちゃんと聞きたいのに、同時にすごく怖くてたまらない。
「俺明日、米じゃなくてパン食いたい」
ぶわっと胸が熱くなった。
まだ一緒にいてくれる。
明日も会える。
俺は再び急上昇する気持ちを必死に抑えながら、明日のお弁当はサンドイッチにしようと心に決めた。
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