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「あれ、雨じゃん」
女の子と何の進展もなかった遊園地を終えて、再び学校生活に戻る。
教室の窓を濡らす雨は、シトシトと降り出した後たちまち勢いを増していった。
「真島と遊園地行ったらしいじゃん。俺にお土産は?」
「二人で、みたいな言い方すんな。土産話でよければしてやるよ」
「話はいらん。食い物よこせ」
ヒビヤンが後ろからぶーぶー文句垂れてくる。
それをガン無視して窓の外へと目を向けると、雨は随分本降りになっていた。
今日は屋上で飯食えないな。
頬杖つきながらぼんやりと昼飯の事を考えれば、当然のように真島の顔が頭に浮かんだ。
俺の思考は昼飯=真島になってるんだろうか。
遊園地の帰りはなぜか真島に送られて、その上『可愛い』とか気色悪いことを言われた。
あいつの目が腐っているのは知っていたが、そこまで重症だとは思わなかった。眼科も真っ青の病状だ。
結局あのあと、貞男は亜美ちゃんを連れてしっかり戻ってきた。
亜美ちゃんは少し残念そうだったが、帰り掛けに「まだ頑張りたい」と俺に報告してきた。
そんな報告はいらん。
頼むからさっさと諦めてくれ。
じゃないと俺がまた真島の、鬱陶しいしょぼくれ顔を拝むことになる。
昼休みになっても雨脚が弱まることはなかった。
いつも通り俺の教室に足を運んだ真島は、雨だろうと変わらず俺の顔を見て機嫌良さそうにしている。
「雨だから今日屋上ナシな」
「――えっ!」
当たり前だろ。土砂降りの中メシ食えるかっつーの。
真島は今雨に気付いたというような反応で、驚いたように外を見たり俺を見たりしながらテンパっている。
相変わらず俺の前だと格好悪いな。
「そうだな…食堂も混んでそうだしなあ」
「…っあ、それなら俺いいところ知ってるかも」
これは予想外だった。
学校内でのいいところなんてたかが知れてるだろうが、せっかく知っていると言うのならその提案に乗ってみることにする。
「じゃあお前に着いてくわ」
「うん。こっち」
そう言って歩き始めた真島に着いていく。
廊下を歩くだけで女子の視線集め放題な真島だったが、それには一目もくれずにひたすら俺をチラチラと気にしていた。
挙動不審な動きすんなと眉を顰めたら、真島は慌てたように前を向く。
渡り廊下から教室棟を出て、真島は特別棟の方へと向かった。
特別棟はほとんど特進科が使っているので、普通科の俺はめったに入ることはない。
教室棟と違ってすれ違う生徒はどいつもこいつも真面目そうな風貌で、賑やかさもなく静かだった。
「ちょっとまってね」
真島はそのうちの一室の前に着くと、鍵を取り出して勝手に開ける。
なんで鍵とか持ってんだ。
中はただの小じんまりとした実習室だった。
この時間、当然だが誰も使っていない。
「…えと、去年の話なんだけどね、俺部活と勉強の両立がなかなか出来なくって。それで部活後にも居残りして勉強してたんだけど…そしたら数学の先生が、ここ資料も揃ってるし特別に使っていいよって鍵をくれたんだ」
「へえ」
数学の先生と聞いて、いつもヒビヤンのせいで怒られたり睨まれまくってるあの顔を思い出す。
あの眼鏡のオッサン、真島には贔屓しやがって。
これが授業を聞いていない奴と真面目に勉強している奴の差か。
「ここ誰も来なくて静かだし、だからいいかなって思ったんだけど…」
「おー。飯食えればなんでもいいよ」
そう言って勝手に中に入ると、中央にある机ではなく窓際を背にした床へと座り込む。
机より床で壁に寄りかかって食ったほうが楽なんだよな。
真島はどこかホッとしたように俺の隣に座った。
手渡された真島の今日の弁当はサンドイッチで、種類豊富なそれに思わず目を輝かせる。
そういや昨日真島にパン食いたいとは言ったが、さっそく忠実にこなしてきてくれるとは。
さすが俺の専属シェフ。
「うっま。お前神かよ」
残念ながら俺の乏しい語彙では食リポは出来ないが、それでも素直な感想を言えば真島はくすぐったそうに表情を緩めた。
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