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貞男に声を掛けられて、驚いたように教室入り口をバッと振り返った真島と目が合う。
軽く手をあげると、勢いのまま立ち上がってこっちにきた。
が、勢いあまりすぎて思いっきり目の前の机にぶつかっている。
障害物多い教室で直進しようとすんな。
「たっ…高瀬くんっ、なんで――」
「とりあえず弁当食おうぜ。どうせ持ってきてんだろ?」
「持ってる!」
真島はダッシュで戻ると、またダッシュで戻ってきた。
クラスの連中が真島の行動に唖然としている。
こいつ俺といたらどんどんかっこ悪い人間になっていく気がする。
「あの…ビックリした。まさか高瀬くんがきてくれるなんて」
屋上への道すがら、真島が興奮で赤らんだ顔をしながら俺を見る。
かと思ったら、ぼろっとその瞳から涙が溢れた。
え、なんで。
まだ俺何も言ってないんだが。
「…わっ、ごめん。どうしよう。すごい嬉しくて…」
「…あー、うん」
「すごい会いたかったんだ。すごく、すごく会いたくて。何度も教室まで行ったんだけど…っ」
言いながらまた泣けてきたんだろう。
だが慌てたように真島はゴシゴシと目を擦る。
仕方なく俺は宥めるように真島の手を握ってやると、そのまま屋上へと歩く。
「お前が来てたって女子から聞いたよ。悩んでるならさっさと声掛けてくればよかっただろ」
「…えっと、それは高瀬くんが言っていた事があったから。まだダメだなって」
「え、俺なんか言ったっけ」
たどり着いた屋上を開け放つと、気持ちのいい風が髪を吹き抜けていく。
日差しは強そうだったが、俺達はいつもの場所に腰を降ろした。
「ほら、泣いてたら飯食えないだろ」
「そ、そうだよね。ごめんね」
あと手も離してくれないと飯食えないんだが。
掴んだのはこっちからだったが、今はしっかりと真島に握られていてビクともしない。
「おい。また鼻血だすぞ」
「わっ」
思い出したように真島は両手を鼻に当てる。
その間抜けヅラを見たら、なんだか笑えてきた。
ふっと表情を緩めると、真島は安心したようにようやく涙を止めてくれた。
久々の真島の弁当はやっぱりうまかった。
綺麗な彩りの三色そぼろ弁当を食いながら、ふと思い出す。
「で、俺何て言ったんだっけ」
「えっ?」
「さっき言ってただろ。俺が言ったことがあるから会いにこなかったって」
「…あ」
ちまちまと女子のように弁当を食いながら、かあっと真島が顔を赤くして俺から視線を逸らす。
あの時の真島がした行動の割には、そこまで酷いことを言った覚えはないんだが。
「…あ、頭冷やせって」
「ああ」
確かに言ったな。
でもそこまでキツイ言葉だろうか。
「ぜ、全然俺冷えなくて」
「は?」
「…冷静になったから行こうって教室行っても、どうしても高瀬くんの教室までくると頭にまた血が上っちゃって。こんなんじゃまた高瀬くんに嫌な気持ちさせちゃうって思ったら…その、なかなか声掛けられなくて」
「…マジかよ」
どんだけ俺の言葉に忠実なんだよコイツは。
ここまでくると俺が死ねっつったら死にそうだな。
なんて冗談で思っただけだが、ちょっと笑えない気がしてきた。
「だから…ごめんなさい。まだ今もドキドキしちゃって、頭冷えてないんだけど…」
「あー、もういいよ。なんか俺の言い方が悪かった」
投げやりにそう言って再び箸を進める。
パクパクと飯をかきこみながら、俺は貞男が言っていた言葉を思い出す。
こんな奴、どうやってあまり傷つけないで別れろって言うんだ。
残念だが無理だ。
無理すぎる。
真島を傷つけないで別れることなんて、絶対に出来ない。
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