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修学旅行の行き先が決まってからは、もうそこまではあっという間だった。
日程は三泊四日で、クラス内でいくつかのグループに分かれて班行動を義務付けられている。
「高瀬くんと一緒に回れたらなぁ」
そう言った真島の横顔はどこか拗ねているようでもあって、俺はクスリと表情を緩める。
何から何まで俺と全部結びつけて考える真島は、本当に一年前から何も変わらない。
そう、もう真島と一緒にいて一年が経とうとしていた。
修学旅行を目前に控えた、昼休みの屋上。
天気も良くて、飯を食ったら腹もいっぱいで眠くなってしまった。
屋上の壁を背にして、隣りにいる真島の肩に頭を預けながら、ぼんやりと夢うつつに俺は口を開く。
「…なあ、知ってるか?」
「ん、なに」
「俺ら付き合って丁度一年くらいになんの」
「――知ってる!!」
興奮するように真島の肩が跳ねる。
勢いよく動かれたせいでカクリと頭が落ちたが、慌てたように元あった位置と姿勢に戻された。
なんだ今の茶番は。
「お、覚えててくれたの?」
「忘れるわけねーだろ。あんな衝撃的な告白」
今振り返っても鮮明に思い出せる。
ずっと無縁だと思っていた学園のアイドルが、ぼろぼろ涙を零して俺に告白してきた日の事を。
完全にからかってやろうと好奇心だけで付き合ったが、気付けばこんなに真島のことを好きになってしまっていた。
そう、今思えばあれが間違いだった。
あそこで真島と付き合っていなかったら、今こんな気持ちには絶対なっていなかっただろう。
隣りにいる真島の体温は暖かくて、寝れそうだったのになんだか泣きたくなってくる。
眠くなって泣く子供の気持ちが少し分かってしまうような、そんな感覚。
「高瀬くんに告白して、ほんと良かったなぁ」
俺の心境なんて全く分かってない真島は、俺と正反対のことを言う。
「それじゃなきゃ、今こんな幸せな気持ちにはなってないよ」
ふふ、と真島はくすぐったそうに笑った。
その言葉に胸がぎゅっと掴まれる。
意味合いは全く逆なのに、考えていることが同じだなんて滑稽だ。
「来年も、再来年も、ずっとその先も一緒にいたいなぁ…」
空に溶けていくような綺麗な真島の声を、目を閉じて聞いていた。
この先になんて行かなくていい。
ずっと、ずっとこのまま時間が過ぎなければいいのに、とぼんやりした頭で願っていた。
修学旅行当日の朝は、これ以上無いほどの晴天だった。
梅雨に入ったから天気が崩れる可能性も危惧されていたが、そんな雰囲気は全く感じられなかった。
「なんか俺の高校生活お前とずっと一緒な気がするわ」
新幹線で俺の隣に座るヒビヤンが、ほいと持っていたガムを俺に渡す。
座席も席順なんだから仕方ない。
ガムを口に放り込みながら思いを巡らせれば、ヒビヤンとは確かに三年間同じクラスだった。
一年のときは席も後ろじゃなかったしたいして絡んではなかったが、二年になって真島のこともあってからぐっと距離が縮んだ気がする。
「お前真島と一緒に回んねーの」
「は?無理だろ。班行動だし」
「お前はどこのいい子ちゃんだよ。相手が女子だったらどうしてたよ」
「…間違いなく抜け出してるな」
なんで女子相手だとすぐ思いつくことが、真島相手だと思いつかなかったんだ。
「一日くらいなら誤魔化せんだろ。協力してやるからせっかくだし思い出作れば」
「なにいきなり、なんか怖い」
「お前って奴は人の好意を」
言いながらくすぐられて、やめろと抵抗する。
ヒビヤンとは班も一緒で、確かにもし抜け出すなら協力者が必要だ。
だが真島のほうが抜け出せるかと言われるとそれは謎だ。特にアイツ目立つし。
それでも真島なら、俺がそうしろと言えば喜んで抜け出してくるだろう。
なんて頭を巡らせながらヒビヤンに抵抗していたら、逆隣にいた女子になにイチャイチャしてんのと白い目で見られた。
ヒビヤンとまでホモ疑惑付くとかマジで笑えない。
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