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それから時間になってホテルへ帰ったが、結局真島からは何もこないままだった。
部屋へ戻ってからは昨日と同じ流れで、少しの自由時間後夕食、入浴、となる。
「お前微妙に浴衣似合わねーよな」
失礼なこと言ってくるヒビヤンを足蹴にしつつ大浴場を出て部屋へ戻る。
それからゆっくりする暇もなく、今日こそはと俺とヒビヤンは友人達に女子部屋へ強制連行された。
男子部屋とは違ってどこかいい香りのする部屋に足を踏み入れて、湯上がりの女子たちとトランプだとかUNOだとか定番の遊びで盛り上がる。
ぶっちゃけ真島のことが気がかりすぎてあまり乗り気じゃなかったが、それでも空気を乱す俺じゃない。
「じゃあ、次の勝負で一位の人が最下位の人に命令な」
「えーっ」
適当にそう言ったら場が一気に盛り上がる。
こうやって徐々に健全なテーブルゲームを王様ゲームへと昇格させていく。
男共のよくやった、という視線を浴びながらスマホをちらりと覗く。
やっぱり、真島からは何もこない。
モヤつく気持ちを振り払うようにこの場の空気に合わせてゲームをすると、俺はまさかの最下位だった。
なんでだよ。
「言い出しっぺの法則な」
ギャハハと周りが盛り上がる。
これで一位が男だったらつまらんなと思ったが、一位は女の子だった。
女子のネタなんて大概決まってる。どうせ恋愛絡みの質問ネタだ。
「じゃあうめのんの好きな人はだーれ」
予測しすぎてたネタで今更驚きもしない。
俺は少し考える素振りをしてから、くしゃりと笑顔を作った。
「真島かな。俺の好きな奴」
言ったら、ドッと周りが笑う。
俺と真島の仲がいいことは三年にもなるともうとっくに知られてて、軽く夫婦扱いされたりもしてたから今更誰もネタだとしか思わない。
むしろその回答を待ち望まれていたとすら思えるフリだ。
冗談はさておき次の勝負、とあっさり流されたが、俺は真島が好きだと口に出せた事が嬉しかった。
初めて好きな奴だと言えたことに、身体中がじーんと痺れるような気持ちにすらなっていた。
俺は本当に、いつの間にこんなに真島が好きになってたんだろう。
あいつの顔が見たくなって、声が聞きたくなる。
喧嘩なんかするんじゃなかった。
触ってほしいのはあるけど、それよりもあいつと心がすれ違うほうがよっぽど嫌に決まってる。
完全な出来レースだったが、真島を好きだと言えた事が酷く俺の心を弛ませてしまう。
何か堰を切ったように気持ちがこみ上げてきた。
心臓が震えて、一気に目頭が熱くなる。
「――ちょっと飲み物買ってくるわ。高瀬、付き合って」
そう言って不意にヒビヤンに手を取られる。
返事する間もなく引っ張られると、そのまま女子部屋から連れ出された。
「…わ、悪い」
「おー」
「マジで…ごめん」
「いいから」
限界だった。
真島が好きで、これ以上嘘を付くのが苦しかった。
胸が痛くて、頭が真っ白だった。
ぼろりと溢れた涙が頬を伝う。
ヒビヤンは何も聞かずに俺の手を引いて、誰もいないバルコニーまで連れ出してくれた。
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