アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
151
-
とりあえず一旦真島を引き剥がしてなんとか全力で深呼吸する。
与えられる愛情がデカすぎて受けきれないとか、俺の器はそんなに小さかったのか。
真島はうずうずとおあずけ食らった犬みたいにもどかしそうな表情で俺をガン見していたが、ともかく一旦風呂から出ようと促す。
だが「分かった」と鼻息荒く言いながら再び俺の身体を引き寄せて口付ける真島は、全く分かってない。
「か、風邪悪化するだろ」
思い出したようにこのネタを引っ張り出すと、ようやく正気に戻ったようでいけない、といつものようにアワアワし始めた。
どうせずぶ濡れだしついでにシャワーを浴びて出ることにする。
下を脱ぎ始めたら真島は焦ったように風呂場から出ていった。
アイツの線引きがよく分からない。
交互にシャワーを浴び終えて、俺は扇風機の前で真島に背を預けながらドライヤーで髪を乾かされていた。
どうやら真島は俺から少しも離れる気がないらしい。
俺のことは全部世話するとでも言うように、何から何まで過保護に尽くされる。
髪を乾かしたら爪を切られて、耳かきまでされる。
もう至れり尽くせりすぎてこのままじゃダメ人間直行コースだなと真島の太腿で悟りながら、俺はぼんやりと口を開く。
「…お前今日泊まってくだろ。合宿は明日までだったわけだし、一日くらい大丈夫だよな?」
「え、い、いいの?」
「おー。どうせ旅行帰りだし色々揃ってるだろ」
耳かきの合間にちらりと視線を向けたら、もう大喜びしてるようでぷるぷると唇を引き結んでいる。
頼むから勢い余って突き刺さないでくれよ。
耳かきを終えたら、真島がぎゅっと後ろから抱きしめてくる。
それから猫でも可愛がるように頬擦りされた。
「好き。大好きだよ。大好き」
ああ、くそ。なんなんだこれは。
いちいち甘すぎるだろ。
むず痒い気持ちが背筋に這い上がる。
ずっと待ち望んでいたはずなのに、予想以上の真島の愛情表現が俺の許容範囲を軽く突き抜けていく。
こめかみに口付けられて、驚きに身じろいだら「ごめんね」と囁かれて優しく手の甲にキスされた。
それからどうしようもなく緩みきった顔で、ふふと幸せそうに微笑まれる。
ここは夢の中なんだろうか。
なんだかそう錯覚してしまいそうなほど、酷く甘ったるい空間。
エアコンがつかないせいで触れたところからぺたりと張り付きそうな汗が滲んだが、不快感なんてまるでなかった。
それから真島が飯を作るというので、祭りの土産もあるがどうせだから作ってもらうことにした。
久しぶりの手料理に心が弾む。
真島は他に客がいるのかというくらい飯を作って、どうやらコイツまで俺が痩せたとか言いたいらしい。
「た、高瀬くんが減っちゃったからっ。もっと増やさないとっ…」
「なんだその表現は」
俺はコイツに体積で見られてるんだろうか。
じとっとした視線を向けたが、手を引かれて頬に口付けられた。
ああもう、またコイツは。
「…嬉しいな。高瀬くんがそばにいてくれるだけで、本当に幸せだよ」
噛みしめるようにそう言われる。
俺も同じだ。
真島と、全く同じことを思っている。
「…ね、高瀬くん」
掠れるように熱を持った声に、空気がどこか艶を帯びる。
ドクリと心臓が跳ねる。
唇にキスされるのかと思ったら、もどかしげに指先でなぞられるだけだった。
したいのに、させてもらえない。
なぜかそんな顔をしている。
さっき風呂場でねだられた『好きと言って』の言葉に返さなかったことを、引き摺っているのかなと危惧してしまう。
頭が真っ白で、すぐにでも『好きだ』と口から滑り出しそうだった。
言わなかったのは意図して言わなかったのではなく、ただ愛情に飲まれてぐだぐだになってただけだ。
ともすれば言ってしまっていたかもしれない。
真島がじれったそうになぜか堪えているから、小さく首を傾ける。
さっきまで好き放題してたくせに、いきなりどうしたんだ。
「…あの、タイムいつまで?」
まだ守ってた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
163 / 251