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真島とたくさんキスをした。
苦しくなって、涙がまた溢れて、お互いにたくさん泣いて、好きだと言い合った。
真島とこれからも一緒にいると決めてしまった。
結局俺は真島を突き放す事ができなかった。
これが本当に良かったのか、正直それが一番正しい選択だとはまだ思えない。
俺の中ではやっぱり真島はまだ俺を忘れて、ちゃんと女と付き合ったほうがいいと思う気持ちだってある。
だけど――。
「高瀬くん、愛してる…愛してるよ」
全身に力が入らない。
教室の壁を背に座り込んだ真島に、俺はグズグズになってもたれ掛かっていた。
しっかりと抱き締められていて、たくさんキスもしたのに真島はそれでもまだ足りない、と言うようにぼんやりと俺の耳元に愛を囁き続ける。
好きだとちゃんと言えて、本当の意味で両想いになってしたキスはどうしようもなく気持ちよくて堪らなかった。
感情に制限なんて掛けられなくて、真島の身体に頭を擦りつけて酷く甘えてしまう。
「…本当に、良かったんだよな。お前と…一緒にいていいんだよな」
「ん、絶対大丈夫だよ。何も怖くないよ。不安なことは全部言ってね」
「すげー…いっぱいある」
「いっぱいあっても大丈夫だよ。全部聞くよ。二人でたくさん相談しようね」
真島の言葉にコクリと頷く。
考えだしたらキリがないほど、本当にたくさんある。
男同士なんて、不安しか無い。
だがそんな俺の表情を見て、真島は安心させるように優しく微笑む。
俺は真島を信じてみようと決めたんだ。
この温もりを離さないと決めてしまった。
「あ、そうだ。いいこと考えたよ。例えば周りが気になるなら、高瀬くんはずっと家にいるっていうのはどうかな」
「おい」
「俺がたくさん働くから、高瀬くんはお仕事に行かなくても大丈夫だよ。俺が全部お世話してあげるよ。そしたらもう周りを気にしなくて大丈夫だよね?」
真島は名案、とばかりにニコニコと笑いながら自信満々に言ってくる。
そうだ、コイツは筋金入りの俺バカだった。
なんだか一気に不安しか無くなったんだが。
「ありえねーんだよバカ。お前大学受かったのに何言ってんだ。それより大学行ったらあっさり他のヤツ好きになるとか言うオチだけはやめろよ」
「ありえないよ。俺には一生高瀬くんだけだよ」
軽々しく言っているようで、その目はいつだって狂気すら感じるレベルに本気だ。
不意に学校のチャイムが鳴る。
もう聞くことはないこの音を二人で聞く。
俺達は卒業したんだ。
もうここで毎日二人で会うことはなくなってしまう。
それでも寂しくなかった。
今日学校から帰る時は、一人になっていると思っていた。
どうしようもない恐怖に縛られて愕然とした夜になるんだろうと覚悟していた。
だけどそんな夜は訪れなかった。
真島が最後に、俺の気持ちを変えてくれた。
「帰るか。どうせ俺んち来るだろ」
「うん!一緒に帰ろう」
真島に手を取られて立ち上がる。
だがしっかりと繋いだ両手から、はらりと何かが落ちる。
「――あ」
真島と二人で声をあげてしまった。
足元に落ちたのは、俺の右手首にあったはずのミサンガだった。
かなり大事にしていたが、ここにきてついに切れてしまったか。
本当によく持ったなと思いながら拾い上げると、真島が目をまん丸にさせていた。
え、何だその顔。
「すっ…すごい。高瀬くん、すごいよっ!奇跡だよっ」
「は?何が」
またなんかくだらない事考えてんだろうなと、俺はじとっと目を細める。
「お、俺ね、ミサンガに願掛けしたんだよ。一生高瀬くんと一緒にいたいって!すごい、叶ったよっ」
「いやまだ叶ってねーだろ」
「――あっ」
一生ってしかも最期にならないと分からん。
と言うかコイツは50円のミサンガに一生分のお願いするとかどんだけ図々しい奴なんだ。
神社の神様もビックリのふてぶてしさだ。
「ああ、それに俺お前の方のミサンガには、俺の事忘れて女を好きになれってお願いしたしな」
「――えっ。お、俺の事好きなのに…そんなお願い…っ」
言葉を詰まらせながら、真島がポロポロとまた泣き始める。
ごめんなさい、苦しい思いさせてごめんなさい、とまたなんか始まった。
しかしコイツほんと、よくこんなんで俺の告白を受け止めきれたな。
ミカ先輩にもいじめられてすぐ泣くような奴が、本当によく頑張ったと思う。
俺は制服のズボンからそれを取り出すと、真島に差し出してやった。
それを見た真島の目が驚きに見開く。
「――ど、どうして…これっ」
「七海が見つけてくれたんだよ。俺が同じのしてたからピンときたらしくて」
「そっか…そうだったんだ。…良かったぁ、見つかって。本当に良かった…」
「お前…俺がそれに掛けた願い聞いても、よくそんな事言えるな」
そう言ったら真島はふふっと笑う。
「だってそのミサンガに掛けたお願いは、絶対に叶わないって分かるでしょ?」
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