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Story1~黒木side~
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「好奇心は身を滅ぼす」
そんな言葉をどこかの本で聞いた気がする。
好奇心なんてものは昔からなかったし、それも下手な大人よりもなかったはずだ。
笑い方も分からない、何をされても泣かない子供。
いつしか大人にも恐れられるような不気味な子供になっていた。
「渚くんは何して遊びたいの?」
町外れの小さな孤児院で不器用に作られた笑顔を向けられながら言われたことがあった。
「なんでもいい」
決まってそう返していた。
もしかしたら好奇心がなかったのではなくて怖かっただけなのかも知れない。
嫌われるのが怖くて、また捨てられたくなくて......。
だけど相手はそれを"無愛想な子供""欲がない子供"と受け取る。
「そっか。じゃあ一緒に外に行こうか」
それでもそう言って見放さずに居てくれた...美穂さん。
恩人であり、親であり、兄弟だった。
話すのも笑顔を作るのも下手なくせに俺を一生懸命面倒見てくれた。
他の孤児院の大人は俺に目もくれなかったけれど、美穂さんだけはいつも隣にいてくれた。
まだ18で正式な職員でもなかったらしいから知り合いの手伝いかなにかで孤児院にいたのだろうか。
それは分からない。
けれどそんな事はどうでも良かった。ただ隣にいてくれるだけでも充分だったのだから。
「今日は天気が良くて気持ちいね。あ、でも渚くんは晴れの日嫌いなんだっけ?」
「......嫌い」
「ははっ。なんでー?」
「太陽が...目に刺さるから」
引きこもりをしている人のセリフのようだが本当のこと。
目が痛くて、体が拒否してくる。
「んー?私は好きなんだけどなぁ。洗濯物がよく乾くしね」
「俺は洗濯しない」
「それもそうか!」
陽だまりのような笑顔で話す美穂さんはとてもじゃないけど俺が触ってはいけない物のように見えた。
けがしてしまいそうで壊れてしまいそうで...怖い。
「今日ね、渚くんと食べようと思ってクッキー焼いてきたの。良かったら食べない?」
「いらない」
「え、えぇ!そんなこと言わずに〜。頑張ったからはい!」
渡されたクッキーはチョコが散りばめられているチョコチップクッキー。
...だけれども、形は崩れているし完璧に焦げている。
正直に言ってしまうと「よく渡せたな」と思うような出来栄えだった。
「ん?どうしたの?手が止まってる」
「...やっぱりいらない」
「ちょ、捨てないで!?何度も失敗してやっと出来たものだから!」
これが何度も失敗して出来たものなら、失敗作を見てみたいよ。
「だから...ね?お願い食べてみて?」
「......わかった」
強請るような目で見られると流石に断りきれず、小さく1口食べてみる。
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