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Story21
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河合が言っていたとおり、ぴったり30分たった時に黒木は帰ってきた。
様子はいつもと同じ感じだったので河合の事を気に入って告白して振られたみたいな事では無いようだ。
いや、そもそもあいつがそんなに簡単に人を好きになるようには見えないし...やっぱり俺が知らない何かがあるのだろうか。
「お待たせ珂神」
『河合は?』
「第一声がそれって悲しいな〜。河合さんはもうすぐ来ると思うよ」
『何の話してたんだよ』
そう言うと黒木は黙って俺をじっと見てきた。その視線に耐えきれなくなってこちらから目をそらした時
「内緒」
と意地が悪い笑顔で言われた。
「失礼します。コウ様遅くなってしまい申し訳ございません」
『河合...別に』
「あ、河合さん。紅茶のおかわり頂いてもいいですか?」
河合は黒木の言葉に無言で従い、スっと部屋の隅に立った。
「うん。やっぱり美味しいね」
『ん』
「そろそろ俺は帰らないとなぁ。もう少し珂神と話したかったけどこの後用事があるから」
『じゃあクソお...親父に挨拶に言った方がいいんじゃねぇの?』
「そうだね。さっきの部屋にいるか...」
そこまで黒木が話した時、ドアが叩かれる音が部屋に響く。
河合と俺と黒木以外でこの家にいる人といったらあとはクソ親父だけだ。
「失礼するわね」
だが入ってきたのは、透き通る白い肌に肩下まで伸ばされた黒いストレート髪。目と同じ色をした薄い紫色のワンピースに身を包んだ...。
_____俺の母親だった。
そいつは人形のような冷たい目をしてこちらに歩いてくる。
そして黒木の前に立つとニコッと笑った。
「はじめまして。コウの母親の珂神千華です。いつもコウがお世話になっております」
だが黒木は言葉を発しない。返事をしないような奴ではないのを知っているので疑問に思い少し顔を覗きこんでみた。
すると、目を大きく見開いて額と頬には汗のようなものもあった。声が出ないと言ったような様子。
河合は黒木の顔をじっと見ている。
『...黒木?』
俺がそう声をかけるとハッとしたように息を吐いた後、無理やり作られた笑顔で
「はじめまして。コウさんの担任の黒木渚と申します」
と言っていたがその声は震えて聞こえた。
「コウ。貴方のような子の家にわざわざ足を運んでくださるなんてとても素敵な先生を持ったのね」
『いつから帰ってた』
「あら。お母様には口の聞き方を気をつけなさいと言っているでしょう?」
『質問に答えろ』
「昨日よ。疲れて自室で眠っていたら声が聞こえたから智洋さんに誰か来ているのかと聞いたらコウの先生が来てると言うから...どんな方か見てみたくてね」
別に帰ってこなくても良かったのに...いやでもこいつがいた方がクソ親父の目が俺に向けられる時間が減るか。
母親といってもこいつは一年中海外に仕事に行っていて帰ってきても俺の前には姿を見せないことだってあるし。
河合といた時間の方が何倍も多いと確信できる。今会ったのだって半年ぶりだ。
「えっとすみません。私そろそろ次の予定がありまして」
「あらそうなの?残念ね?せっかくゆっくりお茶が出来ると思っていたのに」
「今度ゆっくりさせてください。楽しみにしていますので本日はお邪魔しました。コウさんはとてもいい子ですよ」
そんな台詞だけ残し、黒木は部屋を出ていった。
河合も俺とこいつに一言許可をとると黒木に続いて部屋をあとにする。
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