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Story22
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呼吸を荒くしながら玄関前に座り込む男が1人。あとから続いてメイド姿の女が横に立った。
「どういうこと」
珍しく黒木は声を低くしてそう問う。
河合はその様子を横目で見ながら「驚いタ?」と言った。
「死んだんじゃないの?何で生きてる?」
「いや。姉さんは死んだヨ。あレは赤の他人」
「それにしては瓜二つじゃ...」
「私だっテ最初は驚いたヨ?あいつは姉さんにそっくりな奴を嫁に選んだんだっテ」
まだ少し荒い呼吸を整えながら黒木は河合の話を聞いている。
河合は黒木の様子を1度確認すると再び話し始めた。
「だからサ。何かあるト思わなイ?姉さんにそっくりな奴がたまたま嫁になるなんテ思えないシ」
「それはあるかもしれないけど...全然わかんない」
「それも含めて探ってみようかナと思ってるンだよネ。もしかしたラ私たちの知らない何かガあるかもしれないシ」
「.........」
黒木はなにも言わなかった。
否定はしないということは河合と同じ意見なのだ。
やっと落ち着いていた黒木はそのままなにも言わずに靴を履き始める。
河合は黒木の心中を察してそれ以上何も言わなかったが、黒木が靴を履き終わった時に口を開く。
「...また会おうヨ。途中経過とか教えてあげるかラ」
「わかった」
「それに私達友達でショ?」
"友達"なんて言葉を河合の口から聞いたのは黒木にとって初めてだった。
本気で言っているのか、意地悪半分に言っているのか分からないが黒木にとって河合は友達と言ってもいい数少ない存在かもしれない。
いや、孤独に生きていた黒木にとっては唯一の存在かもしれない。
「そうだね」
黒木は先程とは違う柔らかな笑顔でそう言った後、河合に背を向け出ていった。
河合は1度笑顔を零すと客室に向かったのだった。
___________
黒木と河合が出ていった後、客室に残されたのは俺とこいつだけになった。
特に何も話したくなかったし、出来ることならこのまま出ていって欲しかったので黙っていたのだが...。
そいつは黒木が座っていた椅子に座ると、俺に話しかけてきた。
「ほんとに久しぶりね?コウ。なんだか雰囲気が変わった気がするわ」
『はぁ?別に変わってねぇだろ』
「そうね。口の利き方は全く変わらずガキのままね」
笑顔のままそう言うこいつを見て、こいつはいつまでも変わらないなと確信する。
「黒木渚先生ねぇ...どっかで見たことあるような気がするわぁ」
『は?何で...』
「ねぇコウ。あの2人怪しい行動してなかったかしら?仲が良さそうだったとか」
あの二人というのは河合と黒木の事だろうか。確かに度々様子がおかしかったり2人で違う部屋に抜け出したりしていたが...こいつに言ってもいい事なのか?
『無い。ずっと3人で居たけど仲良さそうとも思わなかったし、変わった様子も無かった』
こいつは「ふぅん。そうなのね」と俺を怪しむ目で睨んでくる。
「ふふ。そういう事にしておくわ。楽しみは多い方がいいと言うしね」
含みがあるような、何かを企むような笑顔でそういうこいつは悪魔か女王が似合うと思った。
元々そういう性格してるしな。
こいつが出ていった後しばらくして河合が帰ってきた。
いつもと変わらず落ち着いた笑顔で俺に話しかけると、スイーツもティーポットも片付け出す。
「コウ様はお部屋にお戻りください。後ほどまた伺います」
そう言われたので俺は一旦部屋に戻ることにした。
客室を出る狭間にみた河合は相変わらず仕事が早く無駄がない。
だがその表情は何かを決意したような顔だったのだった。
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