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story6~黒木side~
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美那はくるりと振り返り、部屋の真ん中にあった椅子にどかっと座る。
椅子はまるで英国の王様のような作りで、一つだけ周りに馴染んでいない。
「この椅子の事?こレは姉さんに貰ったんだヨ。相変わらず趣味悪いよネ。だかラ馴染んでないノ」
驚いた。今自分は口に出していなかったはずだ。それと趣味が悪いのは美那もだと思う。
何も言わずに考えてることを理解したって事は心を読んだ?
『...なんで』
「いいネェ、その驚いた顔!気に入ったヨ」
驚いた顔...していたのか。珍しい。
その時この子は普通では無いと察した。
部屋に一つだけある小さな光によって黒く見える美那の目は全てを見透かしているように見えた。
怖くて綺麗。不思議で綺麗。
『...俺はどうしたらいい』
「主語が抜けてるヨ。君はこれかラどうすれバいいかって事?」
『それが分からない』
「本人が分かラなイなら普通はこっちハもっと分からないんだけド。私なら大丈夫」
『教えて』
「時間はあるんだかラ慌てないでヨ。鬱陶しいから」
こんな綺麗な顔をしながら真顔で毒を吐くものだから普通よりも迫力があるというか怖い。
思ったことは大体口に出すタイプなのだろうか。
「まずハ渚の事をよく知りたいかラ仲良くなろうヨ。お互いに質問してサ?」
『...分かった』
「じゃあ私から、何処から来たノ?」
『孤児院、美穂さんが居た』
「ああ。アソコから来たんダ。いい所じゃないネ。可哀想に」
"可哀想"なんてあまり言われたくない。
自分は普通とは違うのだと改めて思い知らされているようで好きではない。
分かっていることを言われるのは誰でもあまりいい気分にはならないはずだ。
「なんでそこニ居たノ?」
『親に...捨てられたから。周りに怖がられて誰も近づかなくて』
「なるほど。恐れられテ居場所がなくなって来た感じカ」
『次』
「ああそうだネ。どうぞ」
『美穂さんは何で死んだ』
いきなりこんな事を聞くのはどうかと流石に思ったがどうしても気になってしまいつい聞いていた。
寧ろそれ以外で知りたいことなんてあまり無いし。
「いきなり大胆だネ。悪いけどそれハ教えられないナ」
"教えられない"という事は"知っている"という事だろうか。
だとしたら何とかして聞き出したい。
『どうして』
「逆にそんな事知っテ何になるノ?姉さんが生き返るの?戻ってきてくれるノ?来ないでショ」
『だって、教えられないって事は何かあったからでしょ。気になる事は普通に知りたい』
「へぇ。頭いいね。正直侮ってたヨ」
美那は面白そうに微笑む。
少し話してみても相変わらず読めないし、年下なのは別で何だか見下ろされてる感じがする。
「そレに面して少しは教えてあげようかナ?私そこら辺はちょちょいと探れるかラ大体は分かったんだよネ」
『教えて』
「それがネ。今回は本当に分かりにくくて中々真実にたどり着けなかったんだけど...」
美那は不機嫌そうな顔をしながら言葉を続ける。
「表上は過労の自殺ってなってるけド本当ハ違う。他殺でも無いト思うけどきっと何かあったはズ」
『何か...』
「それが分からなくテ困ってるノ。裏で何かガあってそれが姉さんの死に繋がっテしまったんだと思うけど」
それから先は...あまり覚えていない。
ただ美穂さんの死に「珂神智洋」という人物が関係している可能性が高いと言われたことだけ覚えている。
けれどまさか会えるなんて願ってもなかったのに、思いもしない形で会うことになるなんてその時の俺は知らない。
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