アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
story26
-
『その中で...いくつも仮面がある中でどれが一番楽なんだ?』
「え?」
『別に素じゃなくてもいいから、俺の前ではその一番楽な仮面を被って居ろよ。そうすればそれがだんだん黒木の素の姿ってもんになるんじゃねーの』
「.........」
自分でも何を言ってるのか良く分からなかった。ただ、何故だかは分からないけど、黒木に少しでも楽でいてほしいと...。
そう思ったのだ。
黒木は黙ってしまったし、しかも俺の目を真っ直ぐ見てくるし、どうしたらいい。
『いや、やっぱり何でもねぇ。なんか暑さで頭がやられてt「それいいな」は?』
「うん、そうするよ。ありがとう珂神」
"ありがとう"なんていつもなら全然聞かないセリフだ。本来俺なんかに向けられる言葉じゃ無いのだから。
こんなにも嬉しいものなのか。ただ思いつきで発した意見が認められて、感謝の言葉を聞けるのは。
『べ、つに...。ちょっと思いついただけだし』
「うーん一番楽な姿ねぇ。学校にいる時かな?」
『は?あれが楽だったのか?』
「さっき珂神にしてた紳士的な俺の姿は女の子とデートする時によく使う」
そう言って黒木はニカッと笑った。
こんなに太陽が似合うのに、どうして自分が分からなくなるようなことになってしまったのだろうか。
きっと何かあったからだと思うが、それに俺が踏み込むのは違う気がする。
『つーかデートする時だけそんな口調でも相手が戸惑うだろ』
「いやー?デートするためだけに相手の子とは会うんだから普段の俺なんて見てないよ」
『え?』
どういう事だろう。デートだけ?出会って好きで付き合ってからデートはするものじゃないのか。
俺が知ってるデートという物はそういう物だ。
「はは。珂神にはまだ早かったな?純粋でいいねぇ」
『んなっ。頭撫でんな!つーか子供扱いすんな!』
口調が...学校にいる時のようになっている。早速俺の前では楽な自分で居始めたのだ。
それが自分だけが「黒木の特別」のように感じられて少し嬉しか...。
待て、俺はなんて事を考えた?黒木の特別のように感じられて嬉しい?
自分が一瞬でも考えたことを再確認し、顔が中心から熱くなってくるのを感じた。
「珂神?顔赤いけどどうした?」
『っ!や、め!』
あ...。多分熱でもあるのかと心配した黒木が額に伸ばしてきた手を、叩いてしまった。
本当に今の俺はどうかしている。
「ったく〜。痛いな。心配したのにもう少し優しくしろよー」
『う、うるせぇ。馬鹿』
「まあ真っ赤な珂神も何かヤってる時みたいで可愛いけど」
やっぱり何でもなかった。こいつ嫌いだ。
何の悪気も無く言うこいつを一度睨んだあと、『死ね』と一言零してやった。
黒木は「えっ!」と驚いていた。
こうゆう事をサラリと言うのがこいつだった。忘れてた。
「何で急に怒ってんの?なんか俺した?」
『やっぱ死ね』
「ええ〜?分かんないなぁ。まあいいや。今日はもう遅いし家まで送るよ」
黒木は「よっこいせ」と立ち上がると「はい」と俺に手を差し出してきた。
こっちの黒木の方がいつも見ているこいつで落ち着く。
俺は差し出された手を掴むとゆっくり立ち上がった。
「珂神」
それと同時に目の前のこいつに名前を呼ばれて顔を上げた。
___チュッ。
唇に生暖かい物が触れてすぐに離れる。
それが黒木の唇だと分かるのに時間はかからなかった。
『お、まえ。こんな所で何してんだよ』
「怖い怖い。睨まない。したくなったからした」
『はあ?意味わかんね』
「ありがとう。今日は楽しかったよ」
少しだけトーンを低くしてまたお礼を告げる黒木。それに何故かまた自分の頬が赤くなっていくのを感じた。
俺がこんなに変わってしまったのは全部全部、満面の笑みで隣を歩くこいつのせいだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
33 / 53