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story32
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正直、思っていた黒木の幼少時代のイメージとは真逆で驚いた。
もっと裕福で、幸せで、充実した暮らしをしていたのかと勝手に想像していたがそんなことは無かった。
あんな、あんなに...今とは別人だったなんて。
「コーちゃん?」
『っ!あ、なに?』
「なにじゃなくて、顔色悪いから本当に大丈夫?って」
『別に平気だ。ちょっと寝不足なだけだから』
「そう?もし辛くなったら言ってね?僕保健室まで運ぶから!」
笑顔でそう言う瑞稀は、とても眩しかった。
瑞稀に心配はかけられないし、昨日知った内容を話す訳にもいかない。
だから、今は隠すことにする。
『なんでもいいけど早く食えよ。昼休み終わるぞ』
「えっ?ホントだ!あわわ、保体の着替えもあるし、急がなきゃ!」
『そんなに急いで食うと喉につまるだろ...』
「そうそう。そんなに急いで食っても美味く感じないだろ?」
『っ!?くっ、黒木!?』
いつの間にか俺と瑞稀の背後には黒木が立っていた。
昨日の今日だというのに。あんな事実を知ってしまった今、どんな顔をしていいのかわからない。
「あれ?黒木先生だ!何してるんですか?」
「それはこっちのセリフ......って前も言ったなこれ。ここ生徒立ち入り禁止の屋上だから。特別に見逃してやってるけど」
「ありがとう〜、流石器が広いね黒木先生!」
瑞稀は、黒木が女も男もイケるやつだと知ってもいつも通り接している。
俺も、そうしなければならない。
勝手に他人の過去の事情に足を踏み入れたのだからこれ以上は触れない方がいい。
知ってしまったのはなかったことにして、いつも通りに戻ろう。過去は過去であって今は今なのだから。
「あ、そうだ珂神。数学の課題まだ出てないのお前だけだぞ」
『あー、やってねぇわ』
「じゃあ明日までにやって出してね。あと、昼休みもうすぐ終わるから2人とも急げよ〜」
それだけ言うと、黒木は俺の隣を通り過ぎて屋上から出ていこうとした...のだが。
その時ふとあの匂いがしたのだ。
俺の、大嫌いなあの匂いが。
『ま、くろっ!』
呼び止めようとしたが、すでに黒木はそこにいなかった。
黒木から、タバコの匂いがした。
「コーちゃん?僕もう着替え行くけど...どうしたの?」
『あ、いや...俺はあとから行く。先行ってろ』
「そう?じゃあ行ってるけど...。後からちゃんと来てね!」
『分かったよ...』
瑞稀は少し駆け足気味に屋上をあとにした。俺も本来着替えに向かわなくてはならないのだが、それどころではない。
何故?俺がタバコの匂いは嫌いだと言った時から黒木からは1度も匂いはしなかったのに。
匂いがしたということはまた吸い始めたということだろう。
『......俺のことは、どうでも良くなった?』
って、何を考えているんだろうか。
別に吸うか吸わないかなんて黒木の勝手だし、そもそも俺が決めることじゃ...。
『なら、なんでこんなに』
苦しいのだろうか。
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