アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
story40
-
何年も前の夢をみた。
俺がまだ『いい子』だった時。
小学生の頃から全国的にも有名な私立校に通っていた。
運動能力は毎年圧倒的学年一。それなりに成績優秀、生まれつきの整った顔だち。お金持ちが羨むほどのぼんぼん。
きっとその頃の俺は言うならば『勝ち組』だった。
1度、小学校の運動会でリレーの選手に選ばれた事がある。
ずっと気が向かなくて断り続けてたリレーだが、その年はやる気が違った。
両親が見に来てくれる。
いつも仕事でこれない両親が。
"絶対に1番になる"
そう胸に誓ったとおりに、トップまで一周半はついていたであろう差を俺が追い上げてぶっちぎりに1着だった。
嬉しくて、嬉しくて、これなら両親が俺を褒めてくれる。
いつも兄ばかりを褒めて特別扱いする両親が唯一俺を同じ扱いにしてくれるのは俺がテストで満点を取った時のみだ。
『99点』ではダメなのだ、『100点』でなきゃ。
だからきっと、運動でも同じ。
1番なら、2番じゃなくて1番なら褒めてくれる。そう信じていた。
けれど...。
「リレーで1番?はぁ、それで?それがどうしたんだ?」
『だからねっ、コウ1番になれるように練習頑張ったんだよっ!父様と母様が褒めてくれるように!』
「ちっ!よく聞けコウ、そんなしょぼい賞でよく褒めてもらえるなどと思ったな!?こんな手書きの紙っきれ1枚!!」
『と、父様...?』
「ダメよあなた。そんな言い方したら可哀想よ。コウにはこんなもので喜ぶ程の能しかないのだから」
『母様?あのね、僕、毎日練習頑張ってきて...』
「いい?コウ、こんなもののために努力する暇があるのなら一分一秒惜しんで勉学に励みなさい。これは命令よ?」
そういう母様の目は、"俺"を見ていなかった。"珂神家の息子"として見ていた。
「お母様の命令は、絶対。前に教えたわよね?これくらいも出来ないの?」
『...で、でき、ます。母様、の、命令、ききます。珂神の子、だか、ら』
「ええそうよ。いい子ね。この紙切れは捨てておいてあげるから、早く部屋に戻って宿題をやりなさい」
『はい...』
そう、うちでは親が絶対。家が絶対。
俺や兄にはなんの権利もない。感情を持つことさえ許されないただの人形。
兄は人形になる道を選んだ。
それはきっとプレッシャーと責任感から、次期当主になるという絶対な現実から。
俺は...。
なりたくなかったから、だからこうやって.........。
_________
『っっっ!!!』
喉の奥に何かが引っかかったような感覚に襲われて目が覚めた。
しばらくぼーっとしていた頭も、だんだん意識が戻る。
ふかふかな何かからゆっくり体を起こし、あたりを見渡す。
どうやら"ふかふか"の正体はソファのようだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
49 / 53