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恋人 2
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『タクシーで来たのか?』
『ううん、駅から近いもの歩いてきたわよ。それより、さっき出てくれたのって弟さん?』
肩がピクリと跳ねた。
『あ、あぁ、末のだよ。』
正兄ちゃんの声も心無しか、動揺がみれた。
『そうなの。……紹介、してくれない?』
なんか、この人、凄くイヤだ。
正兄ちゃんは優しいから断れないのを知ってるみたいだし、まるで、この家を乗っ取っろうとしてるんじゃないかって感じ。
正兄ちゃんの彼女じゃなかったら、出てけって言ってやりたいけど、そんな事出来るわけないし、ましてや、正兄ちゃんの好きな人を拒絶なんて僕には無理なはなしなんだ。
だって、彼女を拒絶するって事は、彼女を好きになった正兄ちゃんを拒絶するのと同じなんだから。
『ぁ、ぃゃ…雫は、今…』
『あら、雫君って言うの?正の弟だもの優しんでしょうね?』
「ぁ、あの…」
僕はリビングから廊下へ出て声をかける。
「あ、雫。」
「玄関で話してるのも、あれだし…入ってもらったら?」
「こんばんは、こんな時間にごめんなさいね。」
「い、いえ、お茶、入れるんで…中へどうぞ。」
そう言って僕はキッチンへ走る。
「ぁ、何がいいか聞くの忘れてた。」
ため息を吐くように呟いた声は、静かに消えた。
どうしようか考えて、お客さんようのカップにハーブティーを入れ、普段正兄ちゃんが使ってるカップに珈琲を僕はココアを入れてリビングへ向かう。
リビングに入るとソファーの右側に正兄ちゃん、その直ぐ左側に正兄ちゃんに寄り添うように座った彼女の後ろ姿があった。
彼女は正兄ちゃんの肩に手を添えて、何やら楽しそうに話をしていた。
その姿を離れた所から僕は、これが普通なんだな。って、かっこいい正兄ちゃんに綺麗な彼女、誰が見てもお似合いの2人、だからこそ殊更、男のお兄ちゃんに恋心を持つ僕が歪で気持ち悪いモノに思えた。
トレーを持つ手が震える。
深呼吸をすると、2人の所まで行って2人の斜め左のラグに腰を下ろす。
「何がいいか、わからなかったんですが」
そう言って彼女の前にカップを置いた。
「あら、ありがとうございます。…うん、いい香り。これってハーブティー?」
一口飲んだ彼女がカップを置くと笑顔で聞いてくる。
「あ、はい。ノンカフェインで、リラックス作用があるみたいです。」
彼女に答えつつ、正兄ちゃんと自分の前にもカップを置く。
「そう…あら、可愛いカップね?正さんとお揃いなのね?」
なんだか、素っ気ない返事をされた様に感じたけど、彼女は笑顔のまま僕と正兄ちゃんのカップに視線を移す。
「ぁ、はい。」
まだ、両親が健在の頃、家族で行った僕にとっては初めての海外旅行。料理好きのお母さんが行きたいと言ったキッチンブランドで見つけたカップに一目惚れして色違いで5つ買った。僕にとっては思い出の沢山詰まった宝物。5つのうち2つは主人を失って棚の奥にしまわれてしまったが、残りは今も、大切に使われている。
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