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心の内 2
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「ごめんなさい。私が怖いわよね?…私も今は、そう思うわ。
あの頃の私は何かに取り憑かれたように雫君に当たってたわ。…でも、あの日、雫君が階段から落ちていく姿を見て、ハッとしたの。自分は何をしてるんだろって。何をして来たんだろうって。なのに、部屋の惨状を見て私はバレたらどうしよう、って思った。雫君に怪我をさせたことよりも怪我の原因が自分だってバレる事に恐怖して無心に片付けをして部屋へ逃げた。
正が帰って来るのが怖くて、でも帰って来ないのも怖くて……正が帰って来た時、安堵したけど雫君が話してるんじゃないか怖くて何も答えられなかった。
次の日、正から雫君の事を聞いた時、やっと、本当にやっと、自分のしてきた事に気づいたの。」
愛美さんの瞳から涙が流れた。
「私の方が年上なのに、雫君を羨んで、妬んで、傷つけて、なのに私は自分の事ばかり。
それに引き替え雫君は私に何を言われても文句も愚痴も言わないどころか、自分が私のせいで怪我をしたのに、こんな私を庇って黙っていてくれた。」
そこまで話すと愛美さんは席を立って、床に正座した。
次の瞬間、両手をついて床に頭を下げた。
「っ!!ま、愛美さん!!何してるの?!」
「ごめんなさい!!ごめんなさい!!本当にごめんなさい!!」
驚いて席を立った僕に愛美さんさんは何度も涙を流しながら『ごめんなさい』と誤った。
僕は愛美さんに駆け寄り彼女の肩を押して身体を起す。
「ごめんなさい。いくら謝っても雫君の傷ついた心は癒えないだろうけど、それでもごめんなさい。」
「謝らないで下さい。僕が悪いんだから、僕がいけないんだから。僕が正兄ちゃんを好きだから、こんな気持ち持ってるのがいけないんだ!!気持ち悪くて、穢らわしいし…」
僕が言い終わる前に愛美さんの声が被さる。
「違う!!雫君は悪くないのよ。……雫君にそんな風に思わさた原因は私だけど、私だから言うわ。雫君は悪くないのよ?雫君のその想いは気持ち悪くも穢らわしくもないのよ。
だって、人を愛する気持ちは素敵で綺麗な物なんだから。
…私は、正への想いが強すぎて歪んでしまったけど、雫君はそうじゃない。
だから…だから、正への気持ちを自分で無理矢理、消そうとしたり捨てたりしないで。お願い。
雫君のお姉さんとして、最後のお願いよ。」
愛美さんの言葉に違和感を覚える。
「…最後?」
「ええ、随分考えたの。雫君の事、正の事、自分自身の事。それに、これからの事。これからどうすれば良いのか、どうしたいのか、でも、たどり着く答えはいつも同じだったの。
だから…私は、正と別れようって決めたの。」
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