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病院
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僕の不安が創り出した夢なのか、未来を暗示でもした夢なのか。
その日から、また僕は毎夜、夢に魘された。
律兄ちゃんと出かけた日の様な夢ではなかったけど、両親がなくなってから見ていた夢だったり、ただ冷たく暗い夢だったり。
動悸と息切れで目覚め、1日を憂鬱の中過ごしていた。
律兄ちゃんが昼間、仕事でいないのと、夏休み期間だという事が助かっていた。
あれだけ辛かった3人での生活でも、ここまで酷くなかったのに、ただ、律兄ちゃんと彼女達の会話で心が弱ってしまった自分に笑えた。
律兄ちゃんと出かけた日から10日後、8月半ば僕はやっとギブスが外れる。
数日前に正兄ちゃんから連絡があって、病院に付き添うと言われた。僕はギブスを外すだけの事だから1人でも大丈夫だと言ったんだけど、正兄ちゃんは着いて行くと言って聞かなかったから渋々、承諾した。
「はい、ではお大事に。」
「ありがとうございます。」
診察室から出ると待合室にいる正兄ちゃんの元へ駆け寄る。
「どうだった?」
「うん、綺麗にくっ付いてるって。」
「そうか、良かった。」
「うん、でもずっと固定してから、まだ違和感あるよ。」
苦笑いで左手で手首や腕のギブスが付いていた所を摩ると正兄ちゃんが僕の両手首を触って「細くなったな。」と少し寂しそうに呟いた。
会計を済ませ病院を出ると正兄ちゃんの車に乗る。
律兄ちゃんのマンションまでの車の中、2人とも話す事もなく車内にはスローテンポの音楽が流れていた。
僕は愛美さんが帰ってから、正兄ちゃんとどうなったのかが気になったが、愛美さんに2人の問題だからと言われた事もあって、何も聞けないでいた。
マンションに着いて、正兄ちゃんは帰るのかと思ったが「話たい事がある」と言われて、もしかしなくても愛美さんとの事だろうと「わかった」と返事をすると2人でマンションまで歩く。
鍵を開けて中に入ると正兄ちゃんがソファーに座ったの見て、僕は正兄ちゃんの珈琲と自分のお茶を入れるとラグに座った。
ありがとう。と言って珈琲を飲む正兄ちゃんを窺うように見ると僕もお茶を飲む。冷たさが喉を通って身体が潤うと、フゥと一息ついた。
「駅の階段から落ちたんじゃないんだな。」
暫くの沈黙の後、珈琲のグラスを置いた正兄ちゃんの普段よりワントーン低い声に、う゛と声が漏れた。
肯定も否定も出来ず、下を向いたまま膝の上の手をぎゅっと握る。
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